第17章 君色日和※
ほの花が震えるほど怒っているのが伝わってくる。心臓の音は煩いし、目には涙も溜まっているが今日は決して泣かない。
それよりも俺を睨みつけて唇を噛み締めている姿は痛々しくすら感じた。
彼女が指を差した先にあったのは確かに薄紅色の膝掛け。俺が使うようなものではないし、任務の途中で見つけたからほの花にやろうと思っていたが、怪我をしたそいつを担ぎあげるために預けていただけで、あげたわけではない。
「…違ぇって。それはほの花にやろうと思って…。」
「他の女性が触れたものなんて使いたくありません!!」
それを聞いてハッとした。
何だ、コイツ嫉妬してるだけか。そこまで分かると俺はつい呆れた顔をしてしまった。
嫉妬してくれているほの花が嬉しくて顔も緩んでいたのかもしれない。
「アイツのことを担がないといけなかったから仕方なく預けただけで、別にわざとじゃないって。怒ってんなら謝る。」
「悪いと思ってませんよね。最近、私の鍛錬も全然やってくれないですし、その方を継子にでもされるおつもりですか。私は用無しですか?薬だけやっておけば良いと思ってるんですか?!」
「ちょ、落ち着けって。ほの花。」
どこまでも話が飛躍するのは悪条件が揃いすぎているせいだ。確かに俺はほの花に薬師の仕事をさせたくて、稽古をつけてやる回数を意図的に減らしていた。
それが此処に来て、悪い方向に働いていて話を悪化させている。
「しかも、私には男に触らせるなやら言うくせにあの方を担いだんですね。そうですか。宇髄さんだって触れてますよね。じゃあ私があの方を血祭りに上げてきてもいいんですね?」
「……ほの花、悪かった。ごめん。確かに俺はいつも自分の嫉妬をお前に押し付けてたな。嫌だったんならそう言ってくれたらいい。」
「…私はいらないってことですか。」
「だから違ぇって。一回頭冷やせ、お前。話が飛躍してるぞ。」
取り付く島もない反応にこちらもお手上げ状態だ。いま話してもほの花とはまともに話すことはできないだろうと踏んだ俺はころのすけを連れて立ち上がった。