第17章 君色日和※
「……どうしたよ、ほの花。俺なんかしたか?」
心配そうにこちらを見ている宇髄さんに感じるのは負の言葉ばかり。情けなくて仕方ない。
信じることもできないの?
それでも止まらなかった。
悔しかった。
何で分からないんですか。
何かしたかなんて何で聞くんですか。
私が知らないところでコソコソと何してたんですか。
分からないと思って、私が鈍いからって。
上から目線で私のことを蔑んでいたんですか。
そんなこと思ってない。
そうじゃない。
でも、考え出すと止まらなくて、心に溜まった鬱憤が口から漏れ出るかのように溢れ出してしまった。
「…宇髄さんは…本当は私のことなんか好きじゃないですよね?」
「は?何言ってんだよ。お前。馬鹿なの?」
そうやって冗談だろ?みたいな顔で笑っていつもみたいに窘めようとしてくるけど、今回はそういうのじゃない。
自信のなさとかそういうので言ってるんじゃない。
知らない事実を他の人から聞かされた惨めさが貴方にわかりますか。
「…宇髄さんから見たらそれは馬鹿でしょうね…。そうやって私が分からないと思って馬鹿にしてたんですよね。」
「ちょ、おいおい、本当にどうした、ほの花。大丈夫か?」
再び触れようとしてきた宇髄さんの手を振り払うと彼を睨みつけた。
「…藤の家に、女性と泊まりましたよね。」
「は?……あー…、任務の帰りにな。怪我した隊士がいたって言ったろ。」
「私が同じことをしたら絶対に宇髄さんは怒りますよね。」
「……ちょ、ちょっと待てって。怪我したって言ったろ。」
「だとしても宇髄さんは前に手拭いをもらったこともすごく怒ったじゃないですか。」
泊まったことは認めた。
しかもそれに関して全く悪びれてない宇髄さんに怒りは沸点を超えた。
何でいつもいつも私ばっかり怒られるの。
そんな独りよがりな感情が頭を埋め尽くしていたから。
「あれはお前が誕生日言わなかったからだろ。」
「また私のせいですか。宇髄さんだって彼女に膝掛けなんて買ってあげたんでしょう?持ってきてくれましたよ。」
指を差した先には風呂敷に包まれた薄紅色の膝掛け。
絶対に宇髄さんが使わないような代物。
彼女に与えたことは明白で悔しくてたまらなくて、それ以上に情けなかった。