第17章 君色日和※
任務が終わったらほの花の部屋に真っ先に戻るのはいつものこと。
コイツの匂いを嗅いで、温もりを感じることでやっと終わったと思えるから。
だから今日も同じように帰ってきたというのに、ほの花はいつものように俺の夜着を抱きしめておらず、死んだように眠りこけていた。
微動だにしないその姿に若干の心配はしたものの、熱もないし、魘されてもいない。
ただ本当に深い眠りについているようで、思わず呼吸の確認をしてしまったほど。
煩い心臓を他人事のように感じながら呼吸をして寝ているだけだと気付いた瞬間の安堵ときたら血流が元に戻っていくようだった。
任務帰りは俺自身も疲れているから深い眠りについていることが多くて、先に目を覚ましたほの花が昼飯を準備してくれているというのに今日は目が覚めても腕の中にほの花がいた。
流石に変だと感じた俺は揺すってみるが、全く目を覚ます気配がない。
見兼ねて昨日の様子を誰か知らないかと思い、居間に行くと雛鶴が昨日頭痛がすると言って早めに寝ていたと教えてくれた。
薬のせいで眠りこけてるのかと思ったら、二度目の安堵を感じた。
これで全ての違和感は解消したと思っていたのに、目を覚ましたほの花の様子がおかしいことに気づく。
体調は悪くなさそうなのに心ここに在らず。
熱もない。顔色も悪くない。
それなのにこちらを見ずに目を泳がすほの花に何か腹にありそうだということはすぐに察しがつく。
ほの花は素直な奴だから聞けばすぐに教えてくれると思っていたし、俺が嫉妬で強姦紛いなことをした時ですら怒らなかった彼女から少しだけ怒りの感情が見て取れたことに驚きを隠せなかった。
それでも頭を撫でてやれば、すぐに絆されると勘違いしていたのだ。
──パシッ
俺の手が宙を舞い、ほの花に拒絶されたことが分かると驚いて固まった。
そんなことを初めてされたし、これからもされることなどないと高を括っていたのだから。