第17章 君色日和※
モヤモヤとする気持ちは勝手に色んな妄想をしてしまう。
宇髄さんがあの人と二人で藤の家に泊まって何をしたのか?
任務中なのだから何もしていないはずなのに疑ってしまう。
怪我をしていたという彼女に優しく触れたの?
抱き上げたの?
膝掛けなんて持ち歩いてないのにわざわざ彼女に買ってきてあげたの?
嫉妬で頭がぐちゃぐちゃになってしまった私は台所に行くと雛鶴さん達に断りを入れて逃げた。
「頭が痛くて…部屋で休んでも良いですか?」
そんなことを言えば心配してくれてすぐに自室に付き添われるが、痛いのは頭じゃなくて心。
痛くて痛くてたまらない。
図星を言われて言い返すことができなかった。
全ての人に認めてもらおうなんて無理な話だが、自分が不満と感じるような女だからというのは問題だと思った。
三人に付き添われて、部屋に入った私は頭痛薬と嘘をついてわざと飲んだ睡眠薬によって死んだように眠りこけた。
何も考えたくなかった。
宇髄さんの匂いすら嗅ぎたくなくて、夜着も抱きしめずに寝た。
"くぅーん"と心配そうに擦り寄るころのすけの声だけが最後に聴くと意識を手放した。
最近ではころのすけはここの家の誰かが面倒を見てくれているので彼の心配はないだろう。
睡眠薬などいつも必要ないし、普段飲まないので目が覚めると陽の光が高い位置から差し込んでいてお昼間近だということがわかる。
「……寝過ぎちゃった…」
「本当だぜ。」
その声に驚いて振り向くと、ころのすけを抱いた宇髄さんが呆れたようにこちらを見下ろしていた。
「頭痛は?治ったのか?」
そう言われて、頭痛ということにしていたことを思い出すと目を泳がせてしまった。
(…そうだった。頭痛の体だった…。)
しかし、明らかに変な態度をとっている私に宇髄さんは額に手を当てて熱の確認をしてくれていて、罪悪感でいっぱいになる。
こんな仮病に付き合わせてしまったのだから。
「熱はなさそうだな。どうした。風邪でもひいたか?」
一向に喋ろうとしない私を変に思ったのか隣に座り込み、頭を撫でてくれている。
いつもはその手が大好きでたまらないのに、あの人に触れたかと思うと途端に触って欲しくなくて、咄嗟に手を振り払ってしまった。
その瞬間の宇髄さんの驚いた顔が頭から離れない。