第17章 君色日和※
嫉妬で頭がおかしくなりそうになるのを何とか抑えると傷薬だけを取り出して彼女に渡した。
「…一度、使った薬は衛生的に同じ人が使った方がいいので受け取れません。彼には新しいものを渡してありますので、どうぞこちらはお持ち帰り下さい。」
何だろう、物凄く惨めに感じる。
こんな薬をこの人が使って、藤の家で一泊したかと思うと思うように考えが巡っていかない。
差し出した薬を受け取ると彼女は、じっと私を見つめている。その瞳に少しだけ怯んでしまう弱い私。
目線を外すと下を向いた。
「本当は音柱様の恋仲の女性がどんな方なのかとても興味がありました。愛おしそうにお話されるので。」
「そ、そうですか。」
「でも、薬師として重宝されているだけで、鬼殺隊士としては大したことなさそうですね。継子で特別扱いを受けているのに薬師としての仕事ばかりしていらっしゃるようですし。」
何が言いたいのだろうか。
彼女が辛辣なことを私に言っているのだけは分かるけど、真意は見えない。
「私のが音柱様の背中を守るだけの力も機会もあります。薬師をしたいのであれば、私に継子を譲って下さい。あなたには恋仲という特別な関係があればいいじゃないですか。大した戦果も上げてないようですし。」
"継子を譲れ"という言葉に目を見開いた。
確かに私は継子として戦果を上げるよりも最近は薬師としての仕事が多い。
それは宇髄さんも認めてくれていたし、彼だけでなく産屋敷様もしのぶさんも。
でも、いくら上司が許してくれたからと言って一般隊士から見たら私がいいとこ取りしてる狡い奴と思われても致し方ない。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
継子を譲りたくないと思う一方で、確かにここ最近、私は彼の継子として戦果を上げたのはいつだ?二週間以上経っているのではないか?
あまりにも彼女の言葉が重くて、言い返すこともできずに下を向き、唇を噛むことなく涙を堪える。
すると、ため息を吐いた彼女が「考えておいてください」とだけ言い、出て行った。
その後ろ姿をただ眺めていることしかできない私はなんて弱虫なんだろうか。