第17章 君色日和※
宇髄さんに薬を渡すと、今日も今から任務ということで忙しなく、出て行ってしまった。
寂しいな…と思うのは間違い無いのだが、耳に揺れる耳飾りが揺れると彼の愛を感じられて顔が緩んでしまう。
(だめだめ…、集中集中!)
心を落ち着かせて薬に向き合うと再び、調合を始めた。
没頭していると時間が経つのを忘れてしまうのは悪い癖で、気づいた時には夕方になっていた。
夕飯の支度も手伝っていなかったので慌てて台所に向かおうとすると、玄関から「ごめんくださいー。」という声が聞こえてきた。
珍しい時間帯に来客だ。
踵を返すとそのまま玄関に向かい、扉を開けた。
そこにいたのは黒髪を高い位置で縛っている可愛らしい女の子。
こんな時間に女の子が…と怪しまないのは彼女が着ていたのが鬼殺隊の隊服だったから。
「こんばんは。あ、神楽さんですか?音柱様の継子でいらっしゃるっていう…。」
「あ、は、はい。そうです。宇髄さんは任務に行かれていて居ませんが…。」
手に持っている風呂敷包を見ると渡すものでもあったのかもしれないと気が焦ってしまった。
「そうですか…。」と残念そうに下を向く女性に少しだけモヤっとしたけど、すぐに考えを取り払い、彼女に声をかける。
「え、と…渡す物があるようでしたらお預かりしますが…。」
「……それではこれを渡しておいてくれませんか?先日、藤の家にて一泊した際にいただいた膝掛けと傷薬の残りです。膝掛け、やはり私なんかが頂けないのでお返しします。神楽さん、よければお使いください。」
膝掛け…?
膝掛けなんて宇髄さん使うだろうか?
真冬でもあの格好で寒く無いなんて言うのだから膝掛けを持っていること事態とても違和感がある。
傷薬は怪我をした隊士に分けたと言っていたのでそれがこの人だったというだけの話。
だけど、何だろう。
藤の家に一泊って…この人と二人でまさか泊まったの?
モヤモヤとした気持ちはどんどん膨れ上がって黒い感情が頭を取り巻いていった。
渡された風呂敷包を開けてみると、やはり見たことのない薄紅色の膝掛け。
そして見たことのある私の傷薬。
宇髄さんに渡している入れ物だけは他の人と分けているのですぐに彼のものだと分かる。
裏側に無事に帰って来れますようにと五芒星を刻んでいるのだから。