第17章 君色日和※
ほの花の薬師としての力量は胡蝶も舌を巻くほどらしくて、いつのまにか蝶屋敷で使う薬はほの花が調合することが多くなっていた。
変わらず鍛錬もしているし、任務にもたまに行っているがその比率は半々になりつつあり、俺はここぞとばかりにほくそ笑んでいた。
ほの花が危ない目に遭わないに越したことはないからだ。
しかし、鬼殺隊にいる以上、任務はあるし、ほの花は割と強いのでひとたび任務に行けばちゃんと戦果を上げて帰ってくるような奴。
それはそれで師匠として鼻が高いのだが、やはり任務がある日は気が気でないのは変わらない。
そんな時に、薬師としての仕事が増えていたので、実際に使って本当に良いと思ったから一緒に行った隊士が怪我をすれば惜しみなくそれを分けていた。
ついでに「俺の女が作った」と言うことを声を大にして伝えることで男には牽制をしてきた。
その甲斐あってほの花がお館様の専属薬師としてだけでなく、鬼殺隊の薬師としての名を馳せるのに時間はかからなかった。
前回の任務で一緒に行った隊士が怪我をして、持っていた薬を分け与えていたので手持ちがなかった俺はほの花にもらいに来た。
本来、ほの花の薬が欲しくても胡蝶のところで診察を受けなければもらえないが、こういう時、恋人の特権というか師匠の特権というか…
俺は此処ぞとばかりにほの花にもらいに行っている。
あわよくば完全に薬師としての仕事だけになってくれたら良いとすら思っていた俺は宣伝活動に余念がなかったし、それが間違いないと思い込んでいた。
ほの花との関係性は頗る良好だったし、何でも受け入れようと努力してくれる彼女に調子に乗っていたと思われても仕方ない。
だから重大な過失をしていたことに気付くことができなかった。