第17章 君色日和※
「なぁ、ほの花。傷薬と痛み止め欲しいんだけどあるか?」
部屋の中で薬の調合をしていると宇髄さんが部屋に入ってきてそんなことを言ってきた。
最近では傷薬など頼まれることが多くて、隊士の人にお渡ししている。それを知った産屋敷様がお給金をその分上乗せして下さっているのもありがたい。
何故こんなにも私の傷薬の評判が良いのかはよく分からない。
痛み止めや傷薬などでは鬼殺隊の任務の時に重宝するようで、自分の鬼殺隊として任務もちょこちょこあるが、それよりも薬師としてのお仕事のが多くなっていた。
「ありますけど、宇髄さん怪我したん……じゃないです…ね。ふふ。よかった。」
不謹慎だが、やはり任務帰りの彼が無傷なのは嬉しくてたまらない。もちろん怪我をして帰ってくることもあるが、今のところ重傷ということがないのが救いだ。
「俺じゃねぇよ。この前、一緒に行った奴が怪我したから分けてやったんだ。お前のおかげで派手に喜んでたぜ。ありがとな。」
「そうだったんですか?喜んでもらえて良かったです!」
「流石は俺の女だな!」
宇髄さんはとても褒め上手だ。事あるごとに薬師として私のことを褒めてくれて、認めてくれて……、恐れ多いと思う一方、益々頑張らなければ…!と思わせてもらえていた。
宇髄さんに作ってもらった温室のおかげで滞りなく薬の供給ができるのもその一端だ。
薬箱から傷薬と痛み止めを出すと彼に手渡した。
「前から言ってますけど、痛み止めは一度服用したら6時間空けて飲んで下さいねって…宇髄さんは飲んだこと一回しかなかったですね。」
「ああ、でも、すげぇよく効いたからよ。お前すげぇな。」
普通の頓服を出しただけのつもりだが、現在我が国で流通しているものより異国の西洋医療が基礎となっている薬なのでそう言われると母が褒められているようでもあり鼻が高かった。
「ありがとうございます。そうやって言ってもらえると母も認めてもらえてるみたいで嬉しいです。」
「母親の力をちゃんと受け継いで活かしてる俺の女がすげえの。」
ただ最近は毎日が本当に忙しくて、宇髄さんとゆっくり話す時間もない。何もかも中途半端にならないようにするのに必死で心にも余裕がなくなっていたように思う。