第16章 子犬のワルツにご注意を※
「…なぁ、お前馬鹿なの?」
「え、…?」
「俺のこと煽りすぎだって。何だよ、そのクソ可愛い理由は。」
目の前にいる恋人は俺を煽ることが特技のようだ。自分がいない時のために夜着が欲しいだなんて生まれて初めて言われた。
好きな女にそこまで言われて嬉しくない男がいたら見てみたいくらいだ。
「…気持ち悪くないですか?」
「何で?じゃあ俺も欲しいから交換しようぜ。」
「え?良いんですか?!」
「ああ。ちゃんと俺がいない時はそれ抱きしめて良い子に寝とけよ。」
目を輝かせて喜ぶほの花が可愛くて仕方ない。気持ち悪いなんて思うわけがない。
そもそもほの花は俺の女。任務の時も自分のことを考えてくれると言うのであればそんな嬉しいことはない。
むしろ良いことしかない。
「…嬉しいですーーっ!宇髄さんの匂いがして安眠できそうです…!いつも心配でなかなか寝付けなかったので。私なんかに心配されなくても大丈夫だって分かってるんですけど…。えへへ」
その言葉に長期任務帰りにほの花の目の下にクマがあった理由を潔く知ることになり、ため息を吐く。
「あのな、そう言うことは早めに言えよ。体調崩しちまうだろ?今着てるやつをやるからちゃんと寝てろな?匂いしなくなったらまた変えてやるから。」
「え、良いんですか…?嬉しい…!!ありがとうございます!」
満足そうに微笑むほの花を見るともう一度引き寄せて抱きしめた。
俺だってほの花の匂いが好きで、帰ってくると鼻腔いっぱいに吸い込んでいた。
この匂いと温もり、肌…全てが俺の帰る場所だと思っていたのでほの花も俺を求めてくれていたことが嬉しくてたまらなかった。
新しくシャランと揺れる耳飾りが増えても、変わらないことがある。
それはお互いの居場所。
俺たちの帰る場所。