第16章 子犬のワルツにご注意を※
【おまけ】
冨岡邸──
「よぉ!冨岡!ほの花が世話んなったんだってな!ありがとな!」
俺がその日に冨岡の家を訪ねると行った瞬間にビクッと肩を震わせるので思わず笑えてきた。
「う、宇髄…、俺は何もしてな…」
「わぁーってるって。お前もほの花も俺にビビりすぎだろ。礼しに来ただけだって。」
そう言うと突然、玄関の前に立ちしきりに後ろを気にしている。
コイツ、絶対俺が怒り狂って此処に来たと思ってんな。玄関壊すわけねぇだろ。
ほの花が腰を負傷して(自分のせい)動けなかったので一人で来たのも余計にそう思わせたのかもしれない。
「玄関壊しやしねぇし、お前のことも怒ってねぇ。」
「…熱でもあるのか?大丈夫か?胡蝶のところに連れて行ってやろうか?」
「ねぇよ!!俺はお前には怒らねぇし、柱の奴らは全員信頼してんだよ。だから、俺がいない時にゃ、また宜しくな!」
「……熱…。」
「だからねぇって!胡蝶ンとこ行きたきゃ一人で行ってこい。どうせその方がお前だって嬉しいんだろうが。俺は可愛いほの花が待ってるからよ。」
ボーッとしてこちらを訝しげに見る冨岡にほの花が前もって準備していた茶菓子を渡してやる。
「たまには胡蝶に甘味の一つや二つでも渡してやったら喜ぶんじゃねぇの?」
「…甘味?好きなのか?胡蝶は。」
「いや、しらねぇけど。好きなもんくらい自分で聞いてこいや。」
ちったぁ背中を押してやったつもりだったが、思いの外、鈍いし、勘の悪い冨岡に顔を引き攣らせるしかない。
何なら自分の恋人と同じ系統の鈍さを感じる。ほの花ならまだしもコイツの世話を焼いてやる義理もないので、それだけ言うと冨岡の家を後にした。
(…それにしても俺にビビりすぎだろ。失敬な奴だな。)←自分が蒔いた種