第3章 立ち振る舞いにご注意を
ナニを聞いているのだ。俺は。
分かってる。コイツらにそんな気持ちがないことくらい。
でも、寄り添うような二人に甘い空気があったかどうかは置いといて、"邪魔をした"気分になったのだ。
住まわせると決めたのは自分。
部屋をあてがったのも自分。
だからコイツらがその部屋でナニしようと俺の関知することではない。
しかし、上官として…そういう関係性は"正しく"理解することが必要だと言い聞かせて恥を忍んで聞いてみたのだが、デカい目をもう一回り大きくして見開くほの花。
暫く呆けていると、「あはははっ!」と笑い始めたので今度はこちらが呆ける羽目になった。
「まったく、あり得ません!隆元であっても大進であっても。だってあの三人は奥様がいたんですよ。」
"いたんですよ"という過去形の言い方が引っかかった。ほの花は昨日、鬼に襲われて家族を失ったと言っていた。
それはあの三人も失ったと言うことで…。
ほの花の今の発言からすれば彼らの妻が亡くなったことを意味していた。
「私も姉みたいに慕っていたんです。本当の兄が四人いたんですけど、姉はいなかったので凄く大好きでした。」
ぽつりと話すその内容はとても穏やかじゃないので、込み入った話をさせてしまったと後悔をした。
「…悪かった。そうだったのか。」
「いえ!彼らもツラいはずなのに私について来てくれて感謝しています。元はと言えば…私のせいと言われても仕方のない状況だったのに彼らは私を一度も責めませんでした…。」
俯いて、布団を握りしめているほの花が泣いてるんじゃないかと思い、持っていた膳を床に置くと駆け寄った。
「…だから、絶対彼らには幸せになって欲しいんです。いつかはまた妻を娶り、幸せな家庭を築いてほしい。きっと亡くなった彼女達もそう思ってくれてると思うんです。」
震える声で話してくれる彼女の肩を思わず抱き寄せると自分の胸に閉じ込めた。
こうすれば涙は見えない。
泣きたくないのであろう彼女の希望を少しでも叶えてやるために無我夢中で掻き抱いたその体はとても小さかった。