第3章 立ち振る舞いにご注意を
宇髄さんは宣言通り私の残りを全て平らげてくれて、その気持ちの良い食いっぷりに口を開けたまま呆けてしまった。
「そんなに食いっぷりが良いと奥様方は嬉しいでしょうね。」
「体がデカいからな。」
「確かに!!宇髄さんほど大きな方に出会ったのは初めてでした!」
「柱の中には俺よりデカいやつが一人いるが、それ以外はそういや俺も見たことねぇな。」
そう言えば昨日の柱合会議に熊みたいに大きい人がいたのを思い出した。宇髄さんの継子になったと言うことは彼らとまた会うこともあるのだろう。
「ご馳走様でした」と手を合わせて膳を下げるため立ち上がると肩を掴まれてそのまま布団に押しつけられた。
「お前の今日すべきことは?」
「……寝ること、です。」
「ん。よし、分かってんじゃねぇか。」
覆い被さるような彼の顔が近くて、こちらの顔が熱くてたまらない。"ほの花様は免疫がないから"という正宗の言葉が甦る。
確かにそうだが、彼も悪いのだ。ここまで家族や正宗達以外と顔が近くなったことなどないのだから。
そりゃあここまで美丈夫な宇髄さんならば慣れた行動かもしれないが。
漸く離れてくれた宇髄さんが膳を両手で持つと立ち上がった。
ということは…片付けてくれるということか。
私は上官に何をさせているのだ。もう彼の顔をちゃんと見れない。一生彼には足を向けて寝られないだろう。
しかし、すぐ部屋を出ていくかと思いきや、襖の前に立ち止まったまま動かない宇髄さんを不思議に思い、その後ろ姿を見つめているとさっきより少し低い声で発した言葉にすぐに反応ができなかった。
「アイツとデキてんの?」
だってそんなありえないことを聞かれるとは思わないでしょう?確かにさっきの状況は寄り添って見えたのかもしれないが、お互いが一番ないと言い切れる関係性なのだ。
それは隆元であっても、大進であっても。
私たちは家族同然で育った兄妹のような関係なのだから。