第16章 子犬のワルツにご注意を※
足に縋り付くほの花は着せていた夜着が俺のものだからか、完全に肌蹴てしまっていて肩までだらんと出ている。
そんな姿を見てしまえば厭らしい気持ちになりがちな俺だが、今回はそうなった理由が分かっているのでほの花の前にしゃがむと背中を撫でてやる。
「…なんで、ですかっ…、わたし、おんしつ…って、…。」
どうやらちゃんと贈り物の意図まで分かっているらしい。そこまでわかると少しホッとする。
温室なんて仕事に関わることなんだから贈り物なんかにしなくても頼まれればすぐに作ってやるつもりだった。
それをほの花が遠慮するから勝手に買ってきたっていいだろ?俺だって自分の女を着飾ってやりたい。それが似合うだけの美しさがあるのだから。
「お前な、どう考えても温室なんて贈り物のじゃねぇだろ?それにこれは俺がお前に似合うだろうなって思って買ってきたんだけどよ、派手に似合うじゃねぇか!流石俺様だぜ!」
「……見たい…。鏡…鏡…。」
そう言うと這うように鏡台に向かうほの花。
まだ体が言うことを聞かないのだろう。
仕方なく、抱き上げると大人しく腕に掴まって"早く早く"と顔が言っているように感じて顔が緩む。
「ほらよ。此処でいいか?」
鏡台に来るとまずは肌蹴ていた夜着を慌てて直して、まじまじとそれを見るとぽっと桃色に変化した頬が可愛くて後ろから抱きしめてやった。
「か、可愛い…。宇髄さんがくださるもの全部可愛いです…!ありがとうございます!嬉しくて泣きそうです…!」
「いや、もう泣いてんじゃねぇかよ!泣いてなかったみたいな言い方すんな。俺の見立てに間違いはねぇからな!」
こんな物言いをしたとて、喜んでくれる姿を直に見るまではやはりソワソワとして落ち着かない気持ちでいた。
耳で揺れるほの花のように純粋無垢で清廉潔白な白い花の耳飾り。
いつも髪につけている花飾りと似ていたので揃いでつけて欲しいと思って買ったが思ったよりもずっと似合っている。
涙目で喜んでくれるその姿を見たくてきっとこれからも俺はコイツに贈り物をするのだろうと安易な未来が予想できてしまう。
でも、そんな自分も悪くない。