第16章 子犬のワルツにご注意を※
体が痛い
体が重い
でも、あたたかい。
それが何故なのかなんてもう考えなくても分かる。微睡でも感じる宇髄さんの匂いに擦り寄ってみると硬い筋肉の感覚。
(…あったかい…。)
もっと寝ていたいと思う反面、そうだ…寝顔みたいんだった…。と思い出して重い瞼をあげてみるが、切長の瞳とばっちりと目が合う。
「………おきてる……。」
「そりゃあんなに弄られりゃ起きるわ。おはよ、ほの花。」
「…ねがお、みたかったです…。おはよ、ございます…。」
「そうしたけりゃもっと静かに起きるんだな。俺だってお前が動かなきゃ寝てた。残念だったな。」
彼の言葉に私が起こしてしまったことを知って申し訳なさが募ったが、降ってきた唇にそれすらも吹っ飛んでいった。
しかし、隣の部屋からカリカリと襖を引っ掻くような音と"くぅーん"と言う音が聞こえてきて二人で顔を見合わせた。
「…あ、ころのすけ…。」
「だな。ったく、邪魔しやがって…。朝の一発の予定だったのに…。」
恐ろしいことを言って退ける宇髄さんに顔面蒼白だが、着ていた隊服は散らばっているので彼が自分の夜着を出してくれてそれ巻き付けると抱き上げてくれた。
大きなそれが何だか彼に抱きしめられているみたいで一枚頂けないかと思うほど。
任務でいない日はこれを抱きしめて寝れば寂しくない。
部屋を出て、隣の部屋の襖を開けると宇髄さんの足に勢いよく飛びついてきたころのすけ。
一人で寂しかったのだろうか。宇髄さんの周りをこれでもかと走り回っているので、中に促して入らせると私を床に下ろしてくれた。
「ころのすけ〜!ごめんね?おはよう〜!」
声をかけると抱きついてくるが、何故か私の耳に向かってぴょんぴょんと飛び跳ねるので首を傾げるが、その瞬間にシャラっという音が聞こえてきて一瞬時が止まった。
え、私、耳になんかついてる?そう言われれば違和感がある。
確認をするためにそこに触れると確かに何かある。でも、それが何なのかを確認するより前に、誰がそこに付けてくれたのかが明白で後ろにいた宇髄さんの顔を振り向いて凝視した。
優しく笑う彼に何故だか分からないけど胸が熱くなって涙が溢れ出てきてしまい、彼の足に縋りついた。