第3章 立ち振る舞いにご注意を
沈黙に耐えきれずに声をかけたのは勿論私だ。
「あの…」と声をかけてみるとその声にハッとしたようにこちらを振り向く彼と目が合ったかと思うとバツが悪そうに謝ってきた。
「悪ぃ悪ぃ!大丈夫か?アイツら朝から押しかけたんだろ?悪かったな。大人しくしとけって付け加えておくの忘れてたわ。」
これは…きっと先程乗り込んできた奥方様達のことを言っているのだろう。やはり彼の意図は彼女達に伝わっていなかったのが明白になり、少しだけ宇髄さんが気の毒に思えた。
まぁ、あんなに綺麗な奥方様三人も娶ったのだから多少は仕方ないのだろうが。
「いえいえ。有難い限りです。」
「あーやっぱりな。どうせこんなことだろうと思ったぜ。」
「え?」
彼の目線は私の布団の横にある膳に向けられていて、よく見たら同じものが彼の手にも握られていた。
(え、まさかこの人も朝餉持ってきてくれたの?!)
流石に彼の持ってきた分まで平らげるのは無理だと顔が引き攣ったが、ドカッと私の隣に座るとそのまま手を合わせた。
「ほら、お前も食えよ。冷めるぜ。」
「…?え?宇髄さんも、ここで食べるんですか。」
「ああ。どうせお前そんな食えねぇだろ?残った分は俺が食ってやるから食えるだけ食え。」
そう言うとそのまま持ってきた朝餉を食べ出した宇髄さん。
(え?ええ?そう言うことなの?)
彼は昨日の夜着ではなく、きっちり隊服を身につけていて、相変わらずの美丈夫具合を惜しげもなく披露している。それに比べて私は寝癖は酷いわ、朝で顔は浮腫んでいるだろうし、最悪だ。
仮にも女なのだからこんな姿を晒したらもう彼の前で格好をつける必要などないだろう。
「頂きます」と手を合わせると前で味噌汁を啜ってる宇髄さんの目尻が下がった。
「お前、また食いすぎて…「吐きません吐きません吐きません!すみません!」
そうだ、あんなことをしておきながら今更何を気にしているのだ。彼からしたら会ってすぐに胸で吐く気狂いな女であることに変わりない。