第3章 立ち振る舞いにご注意を
そう。食欲はないと言ってあったはずなのだが、きっと彼女たちはこれだったら食べれるだろうか?あれだったら食べられるだろうか?とあれやこれや乗っけたのであろう。
その結果…
「…なかなかの量の朝餉ですね。」
「あはは…。最悪この膳だけで一日過ごすから大丈夫。」
昨日出会ったばかりの私たちにここまで良くしてくれるのは有難い。ちょっと好意の度合いが凄いが…。夫である宇髄さんがあんな感じでなんでも受け入れてしまうような広い度量を持っているのだから妻である彼女達もこんな感じなのであろう。
考えれば納得できるようなことなので、体を起こすと膳に向き合うことにした。
「そう言えば昨日の夜、ほの花様屋根の上にいましたか?」
「あ、えと…いた、けど。宇髄さんと一緒だったよ。」
「ああ、そうだったんですね。声が聞こえた気がして。昨日結構肌寒かったけど大丈夫ですか?熱は出ていませんか?」
そう言って私の額に手を付けたその時、「入るぞー」と言い、襖が開いた。声からするに宇髄さんだが、私たちは発熱の有無を確認する為に側から見たら寄り添うような状態だったがため、彼は固まってしまう。
「…あー、邪魔したか?」
そう。そう思っても仕方がないのだ。
しかし、どう考えてもお互い誤解をするような関係性である可能性は限りなく無いに近いため、邪魔されたようなことはない。
「宇髄様、おはようございます。何を仰いますか。ほの花様の発熱の有無を確認していただけです。」
「…そうか。大丈夫か?」
「はい。大丈夫そうなので、私はこれで。朝餉の途中でしたので失礼します。ほの花様、しっかり食べてくださいね。」
そう言うと正宗は微笑み、私たちに頭を下げて部屋を出て行った。
突然、二人だけになった部屋は静けさに包まれる。
何も発しない宇髄さんをチラッと見てみると正宗が出て行った襖をじっと立ったまま見つめていた。
声をかけにくい雰囲気に私もその姿をじっと見つめることしかできずに時間が進んでいった。