第16章 子犬のワルツにご注意を※
「で?この犬っころを飼いたいってことだな?」
「…ズッ、う、は、はい…。」
「何で泣くんだよ。普通に言えば良いだろ。飼うことにしたって。」
泣き止んだほの花を離して不思議そうにこちらを見ている子犬を指差して聞いてみる。
泣くことはないだろ、泣くことは。
頭を撫でてやるも未だに表情が優れないほの花にフゥッとため息を吐く。
「何だよ、どうした?嬉しくねぇのかよ。」
「嬉しいです!嬉しいですけど…私、他にも謝らないといけないことがあって…。」
「謝らないといけないこと?」
ほの花がこんな風に言ってくるということは穏やかな話ではなさそうだが、こんなに泣いてるほの花をこれ以上責めることなんて俺にはできない。
コイツ、分かってやってんのか?そんなわけねぇか。
「…三日ほど、冨岡さんに預かってもらってしまいました。」
「冨岡に?この犬っころを?何で。」
「宇髄さんがいらっしゃらなかったので勝手に飼うこと決めたら怒られるかなぁと悩みながら散歩してたらばったり出会って相談したら預かってくれることになりました。」
「ふーん。なるほどねぇ。」
未だにその経緯のどこに謝るところがあるのか分からない俺はほの花の言葉を待つ。
チラッとこちらを見ながら申し訳なさそうに言葉を紡ぐほの花はまた泣きそうだ。仕方なくポンっと頭に手を乗せて撫でてやるとゆっくりと話し出した。
「…冨岡さんの家に三回行きました。」
「この犬っころの世話でだろ?」
「え?は、はい。」
「そうか、なら冨岡に礼しねぇとな。」
「な、あの、玄関は壊したら駄目ですよ?!」
「はぁ?!壊すわけねぇだろ。お前、俺を何だと思ってんだよ!」
何故ほの花がそんなおっかなびっくりになっているのかが分からず首を傾げる。
冨岡が三間預かってくれて、世話をしに行ったってだけだろ?
そこに何の問題があるのだろうか。
しかも何故そこで俺が冨岡の家の玄関を壊す必要があるのだ。