第16章 子犬のワルツにご注意を※
"ワンッ"と言う鳴き声で意識が微睡から引き上げられて目を開けると見慣れた隊服が目に入った。
宇髄さん帰ってきたんだ。やっと会えた彼に思わず顔がにやけてしまう。
「……うずいさ、ん?おかえりなさい…。」
「ただいま。何だよ、夜のお誘いかよ?ほの花ちゃん?」
「……お誘い?」
そこで漸く私は此処が自分の部屋でないことに気付く。
此処はどこ?なんて考えているとペロっと誰かに足を舐められて「ひゃああっ!」と飛び起きる。
「へ、な、え、…!?」
足元にいたのはころのすけで"なーんだ、ころのすけかぁ!"なんて悠長なことを思ったのは僅か数秒だ。
此処に宇髄さんがいる。
ころのすけもいる。
と言うことは…お願いする前にバレたということになる。
私は起きたばかりの頭を光の速さで下げて畳に頭をつけた。
「宇髄さんーー!申し訳ありませんーーー!!!この子を飼わせてくださいーー!お願いしますー!怪我をしていたので助けたら懐かれちゃって此処まで来ちゃったんですーーー!!」
突然土下座をし出した私に宇髄さんが後退りしたのがわかる。引かれてもいい。とにかく先手必勝だ。
謝れ、謝るんだ。心のかぎりを尽くして謝れ!!
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。勝手なことしてごめんなさい。申し訳ありません。許してください。この子は何にも悪くないんですー!私が勝手に捨てられなかったんですーー!ごめんなさいーー!」
「………、よし。ほの花。とりあえず、落ち着け?な?お前の気持ちはわかってっから。恋人相手に土下座することねぇだろ。ほら。」
畳に擦り付けるように額をつけていた私の体を起こすと優しい顔の宇髄さんがいた。
先手必勝で謝ったけど、この顔に弱い私。
簡単に涙腺が緩んでぼろぼろと涙が溢れて来てしまった。
「ふぇ、ご、ごめんなさい…っ。」
「ったく、お前の願いを俺が許さないとでも思ったのかよ。」
そう言うと私の手を引いて彼の胸の中に収めてくれる。
もう何で泣いているのか分からない。
一つ分かるのは宇髄さんが許してくれていると言うことだけ。