第16章 子犬のワルツにご注意を※
任務を終えて屋敷に到着すると、庭に降り立つ。
そこを見ると温室が完成していて頬を緩ませた。
(アイツ、もう見たかな。)
喜び震えるほの花の顔が目に浮かぶと勝手に目尻が下がる。
ふと縁側を見るとほの花の部屋に灯りがともっていて部屋にいるのかと思うと、足が無意識にそちらに向かう。
早く顔が見たい。
ほの花の喜ぶ顔が見たい。
縁側で履き物を脱ぐと驚かせようと物音を立てないように入ってみる。破顔させて喜んでほの花が抱きついてくる………ことはなく、中はがらんとしている。
部屋の中はほの花の匂いに溢れていて、これを嗅ぐだけで帰ってきたと思わせるが、肝心のアイツはどこ行ったんだ。
部屋を見回すと見慣れない箱が置いてあり、それに近づくと俺は目を見開いた。
何故なら突然、何かに飛びつかれたからだ。
「ワンッ!ワンワンッ!」
「………………は?」
小さな小さな子犬はデカい俺の体からすると圧倒的な体格差。それなのに怖がるどころか擦り寄ってくる。
「…お前、何処から来たよ?っつーか、この部屋の主人はどこ行った?」
「くぅーん、くぅーーん」
「……分かるわけねぇか。」
その子犬を手の上に乗せると本当に俺の手のひらに収まるほどの小ささ。
あまりに小さいから歩いてると蹴ってしまいそうだ。
「なぁ。お前、俺の女を探しに行くか。どうせお前のことを俺に言おうと思っていたんだろうしよ。」
ほの花のことだからコイツのことを俺に伝えようとしていたと思う。律儀な女だから俺に確認しないと大半のことは勝手にしない。
もう少し自分本位になってもらっても怒りやしないのに。
向かうところは
台所
風呂場
厠
アイツらの部屋
居間
屋根の上から帰ってきたのだから屋根にはいないし、あとは俺の部屋。
だけど、アイツは俺の不在の時に勝手に部屋に入ってたことなんて一度もない。
ほの花ならいつ入ってくれても良いと思ってるのに全く来てくれないので若干の寂しさも感じていた。