第16章 子犬のワルツにご注意を※
冨岡さんは最終日は任務に行ってしまっていて、顔を見ることはできなかったが、玄関に御礼状を挟み、もう家に連れて帰ることにした。
どうせ怒られるなら連れて帰ってちゃんと頭を下げようと思ったからだ。それに今夜は冨岡さんがいらっしゃらないことが事前に分かっているのだから此処においておくのは気が引けるというものだ。
玄関から入ると堂々としすぎかな…と思案して、分かるかどうか分からないころのすけに''しーっ"と指を唇に当てて静かにするよう促し、縁側からこっそりと入る。
部屋の中に入ると使ってない木箱を取り出して、その中にふわふわの布をたくさん敷いてころのすけを入れた。
「くぅーん…。」
「あ、ごめんごめん!お腹空いたよね!ちょっと待ってね!ごはん持ってくるね!」
私は台所に行くところのすけが食べられるように野菜を柔らかく煮込み、それを持って部屋に急ぐ。
私と宇髄さんの部屋は隣。
すぐに会える距離に部屋があることはとても嬉しいけど、居ないとなると寂しさが余計に募る気がした。
この三日間、あんなにも宇髄さんのことを考えていたのに、今感じているのは彼を愛おしく想う気持ちのみ。
急に寂しさが溢れてきてしまうと彼に抱きしめて欲しくて堪らなくなってしまった。
もうすぐ帰ってくる。
でも、帰ってきたら怒られる…。なんとも言えない感情を胸に部屋に戻り、ころのすけにごはんをあげる。
「…ころのすけー…。宇髄さんに会いたいからちょっとだけ待っててね?」
会えると分かってるのにどうしても宇髄さんの匂いを感じたかった私は、彼のいない部屋にこっそりと入る。
入っただけで宇髄さんの匂いが感じられて嬉しくて胸が暖かくなる。
帰ってきた時、すぐに寝られるように布団は整えられていてその横に座ると枕に顔を埋めた。
(……はぁー。落ち着く…。)
やっていることは変態の所業だと思われるかもしれないが、宇髄さんの匂いが精神安定剤になっているだから仕方ない。
私はもっとその匂いを感じたくて、そのまま目を閉じた。