第16章 子犬のワルツにご注意を※
「水柱様と会って…犬を飼うかわりにお世話を頼まれたとかですか?」
今度はまきをさんが顔を引き攣らせながらそう聞いてきたので体を前のめりに乗り出す。
「あの、か、帰ってくるまでの三日だけ預かってほしいってことで…その間のお世話は私がするって言ってしまって…、しかもさっき冨岡さんのお家にノコノコ行ってしまいました…。」
「そ、それは…。」
「ほの花様、本当に男心が分かって無いですね。」
「…隆元までそれを言うの。もう何にも言い返せないけど。」
まきをさんの隣に座って黙って話を聞いていた隆元までもが"男心が分かってない"と苦言を呈してくるので逃げ場はないと悟る。
「…て、天元様、きっと勝手に飼ってもほの花さんなら怒らないと思いますよ!」
「そうですかね…、でも、そうだとしてももう今更遅いですよね…。」
「まぁ………天元様の独占欲ちょっと異常ですからね。」
「いや、その愛されてるって言うのは嬉しいんです!嬉しいんですけど…、私…馬鹿だから気付かないことも多くて…。」
宇髄さんは本当に優しいだけ。
優しいからきっと最終的には許してくれると言うのは分かっている。
でも、その前に嫌な思いをさせてしまっていることに私自身が許せない。
「まぁ、ほの花様は今までそういう経験がないんだから多少は男心が分からなくて、死ぬほど鈍くても仕方ないですよ。」
「宇髄様が優しいから許して下さるけど、普通の男だったら捨てられてるかもしれませんが。」
「まぁ、悪いことをしたと分かっているなら誠心誠意謝って許しを乞えばいいんじゃないですか?」
うちの元護衛たちは私のことを何だと思っているのだろうか。
いや、言葉に表した通りだと思うが。
辛辣な言葉も家族のような付き合いをしてきた三人だから言えるものだ。
いま、優しい言葉をかけられたとしても自分が許せないのは変わらないのだから、これくらい苦言を呈された方が返ってスッキリするかもしれない。