第16章 子犬のワルツにご注意を※
「須磨さぁーーん…、どうしよう…!!」
「え、ええ!?ど、どうしたんですかぁ?!ほの花さん!」
「私、宇髄さんに嫌われちゃいます…。」
「………そんなわけないじゃないですかぁ。何だぁ、泣きそうにしてるから心配しちゃいましたよー。天元様がほの花さんのこと嫌いになるわけがありませんよー。」
須磨さんに悲痛の叫びを聞いてもらいたいのに大して取り合ってくれない。
それどころか"さ、ご飯食べましょうー!"と手を繋がれてしまったので私の気持ちは焦る。
こうなってしまえば、一人でも多くの味方を増やしておきたいのだ。
「あ、あの、宇髄さんに怒られるようなことをまたしてしまって…。」
「えー、大丈夫ですよぉー!天元様だってお仕置き受けたばかりなんですからそんなに怒ったりしませんって〜!」
「そうでしょうか…?」
「それでも怒ってくるようなら私がお尻蹴飛ばしてやりますから!!」
須磨さんはそう言うけど、私には帰ってきた宇髄さんの般若のような顔しか思い浮かばない。
優しくていつも甘やかしてくれる宇髄さんはとても私を愛してくれている。
だからこそ少しばかり私に対する心配性の度合いが異常なのが玉に瑕…。
そもそも部下の人が私を見たところで何にも思ったりしない。
「あ、お疲れ様です〜!」で済む話。
町に出れば男性がみんな私を見ているって言うけど、そんな筈はない。
いや、本当に。
人には好みと言うものがあるし、全員が私のことを見ていたら私は此処に来てから何人もの人に声をかけられていた筈だ。
そんなことはほぼ無い。
須磨さんに「大丈夫ですから〜!」と諭されて居間に向かうと残りの五人が勢揃いして食卓を囲んでいた。
こうやって見るともう私たちは宇髄家の家族のようだ。
正宗たちも宇髄さんとは割と仲良くやっているようだし、男同士しっぽりとお酒を飲んでいることもある。
そう言うのを見ると嬉しくなるが…逆にこの三人は私の味方ではなく、間違いなく宇髄さんの味方になるんだろうな…とため息を吐いた。