第16章 子犬のワルツにご注意を※
「三日間、俺が預かったことを言わなければ良いのではないか?その日に拾ってきたことにすれば角は立たないだろう。此処にきたことも俺からは言わないでおくから。」
それはまるで天からの思し召し…!!
冨岡さんの申し出は素晴らしい考えで私は思わず目を輝かせた。
「す、素敵な考えです!そうしましょう!!」
「まぁ、ただ…嘘をついたことがバレた時に俺が殺される可能性があるが。」
「…だ、誰に?って聞いても良いですか?」
「宇髄以外の誰がいる。三日も無断で俺と二人で密会のようなことをして、ころのすけがいたとしても宇髄なら怒るんじゃないか?」
「…ば、バレたら、ですよね?」
「提案しておいてなんだが、ほの花に隠し通せるだけの能力があるとは到底思えないのだが…。」
冨岡さんの辛辣な物言いに私は完全に怯む。
つい最近、手拭いの件を隠し通せなくて文字通り痛い目にあったのは記憶に新しいというのに。
「…酷いです…。冨岡さん、合ってますけど。」
「す、すまない。どうする?やめておくか?」
どちらを選ぶことも難しい私は、結局日が暮れてきたので最後は冨岡さんが気を利かせて「今日のところは預かる」と言ってくれて、家に帰ってきた。
冨岡さんに申し訳ない。
完全に私が巻き込んだことに間違いないし、万が一今回の件で宇髄さんに怒られることがあるならば身を挺して守らなければ。
トボトボと家に帰ると、須磨さんが「どこに行ってたんですかぁーー!」と飛びついてきて、何も言わずに出かけてしまっていたことに気付く。
「ご、ごめんなさい…!お散歩に行ってたんです!」
「あれー?此処に朝いたわんころ居なくなってるーー。」
「え、わ、わんころ…?」
「ほの花さん、見ませんでした?誰かを待ってるみたいに此処にじーっと座ってたんですよ。」
…終わった。
須磨さんに見られているということはこの内容は家に住んでいるすべての人も知っているということ。
もう誤魔化すの無理だ。
帰ってきたら全身全霊で宇髄さんに謝ろう。
もちろん冨岡さんの家に行ってお世話もしよう。
私は全身の力が抜けて目の前にいる須磨さんを抱きしめてしまった。