第16章 子犬のワルツにご注意を※
「…だ、男性ですか…。そうですか、そうですよね…。」
「………??」
ヤバい、とてつもなくヤバいぞ。
此処は男性の家。
犬と一緒とは言え、ノコノコと此処に来てしまった。何なら自分から頼んだ。
前に不死川さんの家に勝手に行った時の宇髄さんのあの怒り狂いっぷりを思い出すと全身鳥肌が立つ。
あの時はまだ師匠と継子の関係性だった。
でも、……今は?
「…あの、女性ってことにはなりませんよね?」
「………どう頑張っても無理があるだろう。」
「ですよね…あううううう…やってしまったぁあ……!」
「…どうした?」
冨岡さんが不思議そうにこちらを見ているが、当たり前だ。
男か女かなんて見ればすぐにわかること。
しかも、この世に生を受けた時点で生物学的には変えることは難しい。
それを変えてくれなんて、少し視点がずれ過ぎてるし、そんなことをしたとしても宇髄さんが怒らないという保証はどこにもない。
「…前に、不死川さんにお誘い頂き、お家におはぎを食べに行った時…、宇髄さん、めちゃくちゃ怒り狂って迎えに来て不死川さんの家の玄関破壊したんです…。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
この間は何!?
何か言ってくださいよ。
何も言ってくれないが、手で顔を覆うとため息を吐く冨岡さん。どうやら事の重大さには気づいているようだ。
大きなため息を吐くと呆れてように私を見た。
「…だから俺は良いのか?と言ったではないか。」
「……ええ?!あ、あれってそういう意味だったんですか?!言ってくださいよ!ころのすけの事かと思ったじゃないですかぁ!!」
「………そう言われても…。」
いや、今のは私が間違っている。
冨岡さんは全く悪くない。
その時の私の勘の悪さが原因かだ。全ては自分の鈍い感覚が引き起こした事。
「…違います、冨岡さんは悪くないです。私が悪いんです。ごめんなさい…。」
腕の中で''くぅーん"と泣くころのすけを抱きしめ直すと項垂れた。