第16章 子犬のワルツにご注意を※
教えてもらった住所に建っていたお家は宇髄さんの家と違ってとても簡素な作りで殆ど装飾とかもない冨岡さんらしいと素直に感じた。
良い意味で無駄なものが何もない此処であの落ち着いた性格が育まれたのかもしれない。
「こんにちはー!ごめんくださーい!ほの花ですー!」
………ん?
いない?
声をかけてから一分は経っているのになかなか来ない冨岡さんにどうしたものかと玄関でウロウロしてみる。
ひょっとして任務でも行ってしまったのだろうか。柱という立場上、急な任務は仕方のないことだから大して驚かないが、この場合はどうしたらいいの?
暫くそこで考え込んでみると、急にぬっ…と音もなく冨岡さんが玄関から現れてギョッとしてしまった。
「と、冨岡さん…?!いらっしゃったんですか?」
「ほの花が来ると言っていたのにどこも出かけるわけがないだろう?」
「………そ、そうですか…。」
(だったら返事くらいしてくださいよ…)
冨岡さんは無口なので仕方ないが、出てきてくれなければそのまま蜻蛉返りするところだったではないか。
心の中で苦言を呈しても腕の中には可愛い可愛いころのすけがいるのでグッと堪えて「お邪魔します…」と庭に向かう。
お一人暮らしなわけだから宇髄さんの家の庭ほどの広さはないにしろ、犬を一匹飼うのならば特に問題もない広さがある。
「わぁーーっ!!これならころのすけも走り回れますね!!冨岡さんありがとうございます!」
「犬小屋などないが、三日いる分には事足りると思う。」
「そうですね!ころのすけ、良かったねぇ!三日後にお迎えにくるからねぇ!ご主人様に聞いたらすぐに!きっと良いって言ってくれるよ〜!!」
宇髄さんに早く聞きたくて仕方ない私は彼が早く帰ってくることを心待ちにしている。
兎に角、帰ってきたらすぐに伝えて、一緒に此処に迎えに………。
一緒に…。
一緒に、来るけど…。
「あの…冨岡さん、付かぬ事お聞きしますが…冨岡さんって男性ですか?」
「女に見えていたのならば一度胡蝶に診察してもらった方がいい。」
その瞬間、私の背中に冷や汗が伝った。