第16章 子犬のワルツにご注意を※
「あはは!みたらしころのすけったら。冨岡さんが気に入ったんでしょうか?遊んで欲しいのかもしれませんね!」
「……み、みたらし、ころのすけ…?何だそれは。」
「えー?やだなぁ、その子犬の名前ですよー!可愛くないですか?」
「……そう、だな。(…変な名前)」
若干変な顔をしている冨岡さんだが、犬は好きなのかころのすけの頭を撫でてくれた。
大きな手で撫でられると気持ちいいのか目を瞑って笑っているかのようにも感じる。
「…犬を飼ってるのか?」
初めて冨岡さん発信の発言に思わず二度見してしまった。彼は人と会話することが苦手というか嫌いなのではないかとすら感じていたので質問してくれたことは嬉しい。
「いやー、違うんですよ。怪我をしていたので助けたら懐かれちゃって…。宇髄さんは任務でいなくて確認も取れないし…。どうしようって思っていたところなんです。」
隠れてコソコソと飼おうと先ほどまでは本気で思っていたのに、今、急に吠えたことで"コソコソ飼う"なんてことは絶対に無理だと悟り、振り出しに戻ったところだ。
「宇髄はいつ帰ってくるんだ。」
「三日って言ってました。」
「それまでの間だけでいいなら預かってやりたいとは思うが…。」
「……え、えええ?!い、いいんですか?!」
思ってもいない申し出に冨岡さんの腕を掴み揺さぶった。
思ってもいない申し出は願ってもない申し出。
可能ならば宇髄さんが帰ってくるまで預かってくれるのはかなりありがたい。
「…だが、俺のところは継子も嫁も護衛もいない。急な任務でいなくなれば面倒を見れない可能性もある。」
そうだ、彼も柱なのだ。
宇髄さんとは性格が真逆の位置にいる彼でも犬は可愛いのか頬を緩ませたまま。
「…そういう時や日中の家にいない時に面倒を見てくれる人がいるなら飼ってやりたいとは思う。」
「……んー、あっ!!そうだ!こうしませんか?私が日中のころのすけの面倒を見ます!それなら三日間、お宅にお邪魔してもいいですか?」
何という良い考えなのだ!と意気揚々と提案したが、それが後で地獄を見ることになろうとは思ってもいなかった。