第16章 子犬のワルツにご注意を※
「みたらしころのすけ〜!!」
「わんっわんっ!!」
あれからものの数分で決まった名前を初めて呼んでみると気に入ってくれたのかまとわりついてくるその姿にもう私はメロメロだ。何なら涎が垂れそうなほど。
やはりこんな可愛い子を此処に置いておくなんてできない…!無理だ。
宇髄さんはいないけど…コッソリ部屋に連れて帰って面倒を見よう。三日だ。三日経ったら宇髄さんは帰ってくるのだから。
意を決してみたらしころのすけを抱っこすると河原を駆け上がり、橋を渡る。
子犬を抱えてニヤけきっている私をいま誰にも見られたくないが、こう言う時に限って誰かに会うものなのだ。
「…ほの花?」
後ろから声をかけられたので、振り向くとそこにはかなり久し振りに見た人の姿で思わず目を見開いた。
「冨岡さん!!お久しぶりです!お元気でしたか?!」
「ああ…まぁ、それなりに…。」
「そうだ!あの時は送ってくださってありがとうございました。ちゃんとお礼ができていなくてすみませんでした。」
冨岡さんといえば最終選別の前の日にぶつかったお詫びということで家まで送ってくれたのだが、それ以来一度も顔を見たことがなかったので二ヶ月以上ぶりだった。
しかし、無口なのは相変わらずで私の話に相槌を打つ程度(いや、打たない時すらあるが。)
私はまたあの時と同じように話を盛り上げるのに必死だ。
「あ!そうそう。竈門炭治郎くんに会えましたよ!冨岡さんに宜しく伝えてくださいって言ってました。」
「…そうか、無事に終えたならよかった。」
「はい!素直ですごく良い子でした。どこでお知り合いになったんですか?」
「………、話せば長くなる…」
「…ん、と…またの機会に…」
"わんっ!わんっ!"
話の途中で突然ワンワンッと吠え出したみたらしころのすけは冨岡さんに向かって尻尾を振っていてどうやら彼がとても好かれているようだと言うことが分かり、無表情に近い彼の表情が少しだけ崩れたような気がした。