第16章 子犬のワルツにご注意を※
宇髄さんは柱なので、急な任務は日常茶飯事だ。
翌日から少し遠方で鬼が現れたと言うことで、掃討と警護のために昼間に出かけて行ってしまった。
温室は部下の人が作ってくれているらしいのだが、「お前は絶対に顔を見せんな」とキツく言われているため、それを知っている雛鶴さん達がお茶を出してくれたりしているが、本来作ってもらってる私がすることなのでは?!とどうも体裁が悪い。
部下の人に強欲鬼女だと思われているかもしれないと感じると気が気ではない。
部下の人が庭に来ている時は、どこにも行けずに部屋でしょぼんとうなだれるしない。
しかし、それも数刻もすれば飽きてきてしまうので、どうしたもんかと玄関まで来ると、外でまたいつぞやの鳴き声と似た声が聞こえてきた。
"くぅーん、くぅーん"
「……?!わんちゃん…!!」
音を立てないように玄関を開けて外に行くと、外壁のところにちょこんと犬が座っていた。
その顔には見覚えがあったし、私の顔を見るや否や足に飛びついてきたので、あの時の犬だと確信した。
「どうしたのー?!ついてきたの?わぁ、可愛いぃぃ…。でもなぁ…。」
小さな子犬抱き上げるとどうしたもんか…と考える。
此処で飼うにしても宇髄さんの了承がいるが、今は不在。しかも三日ほど居ないと言っていた。
…と言うことは三日はこの子を此処では飼えないということだ。
どうしよう
どうしよう
考えながら歩いている内に河原まで来てしまった。此処に捨て置くのは忍びない。
でも、勝手に家で飼うのはもっと忍びない。
いくらこの家を自分の家だと思えって言ってくれたとしても動物を飼うのにはやはりちゃんと主人に確認を取らねばならないはずだ。
その場に座り込むと膝の上にその子を置いた。
地面が近いことですぐに元気に走り回る犬が可愛くて、勝手に頬が緩む。
せっかくなのだから名前を付けよう!
名前なんて付けたら情が湧いてしまうかもしれないが、可愛いその姿を見るだけで欲が止まらなかった。