第16章 子犬のワルツにご注意を※
屋敷に帰ると庭に温室の外枠のようなものが出来ていて胸が躍る。
明日からと言っていたのにもう作ってくれたの?感動してその外枠に近づくと目を輝かせる。
「お、早かったな。お帰り。」
「宇髄さん…!もう作ってくれたんですか?」
「まぁ、大まかにな。俺の隊の野郎どもに作らせた。お前がいない時じゃねぇと此処に来させられねぇからな。」
宇髄さんの言っている意味がよくわからずに首を傾げるが、要するに私がいると邪魔…ってことかな?
「す、すいません…。もし良ければお邪魔であればその間お出かけするようにしますよ?」
「邪魔なんじゃねぇよ。お前の顔を見せたくねぇの。勿体ねぇな。ほの花は俺のだぞ?他の野郎に見せてやることはねぇ!」
「……あの、お気持ちは有難いのですが、そんな誰しも私のことなんて見てませんって。」
「見てるって言ってんだろ。手拭いもらったくせにどの口が言うんだ?あん?塞いでやるぞ、こら。」
手拭いのことを出されると頭が痛いし、宇髄さんに頭は上がらない。
「も、もう忘れてください。手拭いのことは…。」
「無理。一生恨むから一生かけて償えよ。」
ニヤリと笑う宇髄さんからは怒りの感情は感じない。その代わりに未来を確約してくれているような優しさを感じて胸が温かくなる。
「はぁい。では、一生お仕えします〜。」
「三日で作らせるから待ってろな?」
「ゆ、ゆっくりでいいですよ?!」
宇髄さんの発言に彼の部下の人たちが本気で不憫に思う。私のためだと言うのは分かるが、こき使いすぎだ。
元々温室が欲しいなどというのは私の我儘なのだから鬼殺隊の人にさせることではない。
「つーか、既に誕生日から二週間経ってんだぞ?!俺としてはもう不甲斐なくてお前と一緒にいても罪悪感半端ねぇんだっつーの!」
「それは、本当に申し訳ないとは思いますけど…、宇髄さんの部下の方に申し訳ないです…。」
「良いんだよ、アイツらは。」
そう言い放つ宇髄さんは男気があるし、理想の上司だと思うが、普段は本当に派手にぶっとんでる。
それが許されてしまうのも彼の人格によるものかもしれないが彼の部下との関係が若干心配になってしまった。