第15章 君が生まれた日※
もうすっかり誕生日のことを忘れていた私は宇髄さんの"欲しいものはないか?"という言葉の意図が理解できなかった。
そりゃあそうだ。
宇髄さんのことだから遅れたとしても"派手に祝うぜ!"と思ってくれていること間違い無し。
しかし、欲しいものというのはすぐには思い浮かばない。
「あ、えと…思いついたら言います。」
「それも却下。どうせお前のことだからすぐに忘れるだろ。」
「な!覚えてますよー!」
「忘れるって。お前は自分のことだと途端に無頓着なんだよ。自分の誕生日忘れる奴なかなかいねぇぜ?だから早くなんか決めろ。何でも買ってやっから。」
何でも買ってやると言うだけあって宇髄さんはとてもお金持ち。
普段私たちが生活に困ることは一切ないし、欲しいものもすぐに買ってくれる…と思う。←買ってもらったことがないから知らない。
何でもいい…と言われても…。
欲しいものを考えるなんて贅沢な時間だが、思い浮かばないことにだんだんと焦ってきた。
欲しいものと言われても、さっき宇髄さんにも伝えたようにお洒落な服や装飾品には滅法疎くてよく分からない。
羊羹食べたい、豆大福食べたいとか日常的な欲はあるのに、そういうのは全く思い浮かばない。
部屋の中に足りないものを考えてみても…何もない。
鍛錬で足りないもの…ない。隊服の布面積くらい。
薬の調合で足りないもの…、そこまで考えると頭に一つだけ思い浮かんだものがあった。
そんな物をおねだりして怒られないだろうか?と不安になるが、どうせ他に思い浮かびそうになかったので言ってみることにした。
「…あの、何でもいいんですか?」
「ん?おお、男に二言はねぇよ。」
「えっと…、それなら、温室が欲しいです。」
「………はぁ?」
意味が分からないと言った表情の宇髄さんに一瞬怯んだが、何でもいいと言ったのだからもう少し推してみよう。
「薬草の種…持ってきたの覚えてます?」
「あー…アレな。」
「それを植えるところが欲しくて…。外に植えると鳥に食べられてしまうかもしれないので…。」
自分なりに欲しい理由を説明しているが誕生日の贈り物が温室なんて言われて宇髄さんはさぞかし困惑しているだろう。