第15章 君が生まれた日※
ほの花が口づけしたのなんてすぐに気づいていた。
唇にふわりと感じた柔らかい感触と花のような香り。
普段、自ら口づけなどしてきたことがないほの花がしてきたことが嬉しくて寝たふりを決め込もうとしたが、結局はもっと深くしたくなってしまい彼女を腕の中に閉じ込めると舌を絡ませた。
でも、最初こそ抵抗していたのに次第にぼーっと俺の顔を見て惚けているほの花を不思議に思い、唇を離した。
「…朝から大胆だなぁ。ほの花ちゃん?」
「宇髄さんの寝顔可愛くて…口づけしたくなっちゃったんです…。起こしてごめんなさい。」
「…可愛い?おいおい、お前に言われたくねぇ。いつもクソ可愛い顔して寝てるからこっちはお前の寝顔見たくて早く起きてんのに。」
「え?そうだったんですか?じゃあ今度からもっと早く起きないと宇髄さんの寝顔見れないんですね…。」
言うんじゃなかった…とすぐに後悔した。
情事後の翌朝のほの花の寝顔を堪能するのは俺の楽しみだったのに。
長い睫毛に形の良い唇、通った鼻筋、つるんとした肌が小さな顔に整理整頓されたように理想の形で収まっているほの花はまさに目の保養という言葉が最も似合う女だと思う。
そんなことは本人に言ってもちっとも理解してくれないが。
「…お前は俺の後に起きてればいいの。ほの花の寝顔を堪能すんのも俺の特権なんだから。」
「…宇髄さんの寝顔を堪能するのも私の特権ですー。」
「………まぁ、いいけどよ。ちょーっと激しく抱いてやれば起きれないだろうから。」
「なっ…!ず、狡いですよ!それ無しです!平等な権利をください!」
権利ってなんだ。権利って。
俺の寝顔が見たいだなんて変なことにムキになっているほの花に呆れるしかないが、こんなにむくれているのだからたまには起きていないフリでもしてやるか、と甘い考えしか浮かばない。