第15章 君が生まれた日※
「聞くが…その手拭いは何だよ。何が見られてるって?」
「……え?!これのことを怒っていたんじゃないんですか?」
突然、差し出された手拭いにぽかんとしてしまった。どうも話が噛み合わないと思ったら、どうやら全く別のことで謝っているほの花。
もう嫌な予感しかしやしねぇ。
「その手拭いの何に怒るわけ?ちゃんと分かりやすく言ってくれな?ほの花ちゃん?」
「……(嘘でしょ…)」
分かりやすく"やっちまった"という表情をしているほの花に眉間に皺がよる。
「ん?此処でぶち込むか?」
「ちょ、ま、待ってください!い、頂いたんです…!」
「へぇ、誰に?」
「さ、桜井さんと言う方に…。」
「誰だ、そいつ。」
「先日、初任務が一緒だった方で…、怪我をされたので手当てをしたんですけど、持っていた手拭いと…モスリンを使ったようでして…。」
ほの花の言わんとしようとしていることが何となく分かってきた。
しどろもどろになりながら、こちらの顔を窺う彼女に苛つきは止まらない。
「…手当したっつーことね。」
「は、はい。それで…汚れてしまったからと言ってわざわざ買ってきてくださったみたいで…。」
「断ればよかっただろ。」
「断ったんですけど…誕生日の贈り物とでも思って受け取ってと言って押し付けられてしまって…も、ものに罪はないと思い…!すみませんでした!」
「……誕生日…?」
「…え、あ、……。」
恐らくこの時、俺とほの花は同じことでハッとしたと思う。
冷や汗をダラダラと垂らしているほの花がまずいことを言ってしまったと思ったのか目線を逸らした。
「…俺が怒ってたのはそっちなんだけど。」
「す、すみません…!あの、失念していまして…」
「俺に言ってねぇのに桜井っつー男に先に贈り物もらったわけね。」
「え、いや!これは不可抗力で…!」
あー…苛々するな。
誕生日を忘れていたほの花にも
勝手に男から贈り物をもらったほの花にも
それを隠そうとしたほの花にも
自分から誕生日を聞かなかった自分自身にも。
俺はほの花の体を抱き上げたまま無言で屋敷に帰った。