第15章 君が生まれた日※
「よぉ、遅かったじゃねぇか。どこ行ってた?ん?」
「え?!えっと…産屋敷様のところに行ってから定期検診でしのぶさんのところに…。カナヲちゃんとお話してたら遅くなってしまいました…!」
抱えられているため宇髄さんの顔がしっかりと見えるのだが、どことなく怒りに満ちている気がする。
遅くなってしまったことを怒っているのだろうか。今日は朝から機嫌を損ねることがあったからできれば穏便に済ませたい。
ただでさえ朝に「一回じゃ治まらない」発言をされているのだ。私のお股事情は切実だ。
「…え、と…お、怒って、ます?」
「何でそう思うんだよ。」
「だって…雰囲気が怒ってますよ…?」
「…そうだな。物凄く腹が立ってる。お前が隠し事したから。」
……え?
隠し事?
どういうことだろうか。
隠し事とは?
モスリンの件と朝のお誘いを断ったことを怒っているのではないのか?
あまりに突然の"怒ってます"宣言と隠し事をしたという疑いをかけられて身に覚えのない私はキョトンとするしかない。
「…隠し事…?」
「…隠したつもりじゃねぇかもしれないけどよ、そう言うのはちゃんと言えよ。」
怒りよりも不貞腐れてる…?という感情のが強い気がしてきた。
すると頭に浮かんだのは、…懐に仕舞い込んだ手拭い。
まさか見られていたとか…?
気配は確認したが、宇髄さんならば気配を消すことなど容易いことだ。
こんな早くバレてしまうならちゃんと懐に隠して、時間稼ぎをせずとも早く帰って言ってしまえば良かった。
尚も不満そうな顔でこちらを見ている宇髄さんに私は観念して謝ることにした。
「ご、ごめんなさい。まさか見られてるとは思わなかったんです…!」
「…は?見られてる?」
「隠そうと思ったわけじゃないんです…!ただコレ見ると宇髄さんが嫌な想いするかな…と思って…。」
そう言って手拭いを差し出して宇髄さんに献上した。
物に罪はないが、煮るなり焼くなり好きにして貰えばいい。
これをもらったとて、私の宇髄さんへの気持ちに変わりはないのだから。