第15章 君が生まれた日※
三月三日
それは桃の節句
だけではなく…ほの花様の誕生日
ほの花様が全快したことで、今日から鍛錬をし出した。
これはいよいよ伝えなければ拙いと思い始めていた。
ほの花様のことだから此処まで何も言わないと言うことはどうせ忘れている。こんなことはよくあることで、自分の誕生日を今まで生きてきて何度忘れていたか。
他人のは覚えているくせに自分のをすぐに忘れている。最早病気だ。
そんなあの人が宇髄様にちゃんと誕生日のことを伝えているとはどうしても思えない。
彼ほどほの花様を愛して下さる人はいないと思うし、そんな彼だからこそきっと盛大に祝ってあげたいと思う筈なのに…。
桃の節句が過ぎても何も我々にそのことを言ってこないので、途中で隆元と大進と共に「あの人やっぱり忘れてるな」と絶句した。
そんなことを雛鶴さんに伝えてみると、顔を引き攣らせて驚いたので、その後ワラワラとまきをさんと須磨さんも揃って相談という名の緊急会議をしていた。
居間に集まると、六人でため息を吐き合った。
「ほの花さん、天元様に伝えることも忘れてるなんておとぼけちゃん過ぎますよぉぉ…。」
「今更そんなこと言ってももう過ぎちゃったんだから今はどうやって天元様にそれを角が立たずに伝えられるかってことでしょうが!」
「…角が立たずに伝えられる…かしら?ほの花様のことを何でも知っていたい天元様よ?里について行くくらいなんだから。」
恐らく雛鶴さんの言っていることが全てだ。
もう時すでに遅しという言葉が一番しっくりくる。
「…もう、本当にほの花様がすみません。もっと早く気付けばよかった…。」
「三人もいて誰も気付かなかったんだから俺らにも非はあるな。」
「でも、まさか恋仲になっていたし、てっきりそう言うことは伝えてあると思うからなぁ…。」
出る言葉は後悔の言葉のみ。俺たちは六人で絶望に打ちひしがれていると、何と休みで家にいた宇髄様があろうことか居間に入ってきため、恐れ慄く。
瞬間的に六人で顔を見合わせると頷き合った。
とりあえずまきをさんの言う通り「角が立たないように伝える」を実践するしかなさそうだ。
男同士のが良いだろうと思ったのかそそくさと出ていった三人を見送ると宇髄様に向き合い、地獄の誕生日報告をすることになった。