第15章 君が生まれた日※
ほの花がお館様に行っている間、俺は暇を持て余していた。
たまたまそんな日に限って何故休みなのだ。
どうせなら丸一日ほの花と布団の中で絡み合っていたいと言うのに。
鍛錬終わりに湯浴みをして、居間に行ってみると六人が勢揃いしていて少し驚く。
しかも何故か全員が全員ともこちらを見て顔を引き攣らせている。
この家の主人に向かって酷い反応ではないか。
「て、天元様…、お茶飲みますか?」
「…おー、頼む。」
まきをが気を利かせてそんなことを言うから頼んだが、一体なんだと言うのだ。
その場から逃げるようにまきをに続いて、雛鶴も須磨も出て行くので訝しげにそれを見送る。
しかし、その後すぐに正宗が話しかけてきた。
「…あの、宇髄様…。」
「ん?何だよ。」
「…ちょ、ちょうど先週は桃の節句でしたね!」
「……は?…あー、そうだな。そういやその翌日にほの花が帰ってきたか。」
突然、桃の節句だなんて謎の発言に首を傾げるしかないが、妙に神妙な顔をしている三人にひとつ息を吐く。
「…何だよ、言いてぇことがあるなら言えって。」
「…では、言いますが…、落ち着いて聞いてくださいよ…?」
「落ち着いてるだろ?何だよ、一体。」
念を押してくる正宗に若干苛ついてきたが、ここまできたら聞かないと逆に気になると言うものだ。
「…桃の節句の日が誕生日なんです。」
「はぁ?何だよ、そんなことかよ。そういうことはその時言えよな!遅くなって悪かったが派手に宴会でもすっか!」
何かと思えば誕生日の申し出。
ほの花の元護衛として付いてきたコブだと思っていたが、数ヶ月も一緒にいれば家族のようなものだ。
俺に対しては気を遣ってくれていて、何をするにしても俺を立ててくれるコイツらは下手したら誰よりも忠誠心が深いとすら思う。
そんな奴らの誕生日だと言うならば、俺とて祝ってやりたい。
「で?三人のうち誰が誕生日なわけ?」
男が男に贈り物をやるつもりはないが、派手に高い酒でも出してやるかと思いかけていた時、俺は頭を鈍器で殴られるような衝撃を受けた。
「……ほの花様なんです…。誕生日だったの…。」