第15章 君が生まれた日※
──胡蝶邸
「しーーのーーぶーーさぁあーーーーん!!!」
私は胡蝶邸に着くや否や、しのぶさんの部屋に向かって悲痛の叫びを我慢することなく走っていく。
あまりに声が大きかったのか部屋に着くと同時に襖が開かれて小さくて可愛らしいしのぶさんがニコニコと立っていた。
「どうしたんですか?そんなに慌てて。その様子だと体の調子は良さそうですね。」
「あ、えと、そうだ!報告もあるんです、けど!その前に聞いてくださいよー!!」
「??何かあったんですか?」
聞いてくれようと目線を合わせるしのぶさんに私は懐から先ほどもらった手拭いを見せた。
「あら、可愛らしい手拭いですね。宇髄さんにもらったんですか?」
「宇髄さんにもらったのであればこんなに慌ててませんよーーー!!!」
「………それは、大変ですね…。」
一瞬で事態を把握したようでしのぶさんはため息を吐いた。しのぶさんの表情から見ても一目瞭然。今の状況が限りなく悪いことがわかる。
「誰にもらったんですか?」
「…あ、えーっと…….」
ウッカリ名前を忘れてしまっていたが、手元にある桜の刺繍ですぐに思い出した。
「さ、桜井さん!桜井さんって言ってました!」
「…もらったのに今、名前忘れてませんでした?」
しのぶさんに失笑されてしまったが、特に興味のない人で尚且つもういっそのこと忘れてしまいたいとすら思っていたので直ぐに思い出せないのは勘弁して欲しい。
「あぁ、でも…桜井さんって…さっき此処に来ていた隊士の人も同じ名前でしたよ。」
「あ!そ、そうです!しのぶさーーん!私が今日此処に来ること言いました?」
「……………言いました。すみません。…そう言うことでしたか。」
しのぶさんを責めているつもりはないがすぐにその場で頭を下げる彼女を慌てて制する。
まさかこう言うことだということとは思わないはずだし、彼女に非はない。