第15章 君が生まれた日※
"力を使ったら必ず此処に来てください"
そう言われていたので胡蝶邸へと向かっている。
しかしながら、今日は産屋敷様の症状の良し悪しに関わらず、退院してから一週間が過ぎていたので一度体を見せにきてくれと言われていた。
どうせなら産屋敷様の調合の日に合わせて来てくれたら良いと言ってくれていたので、宇髄さんにも了承済みだ。
今回に限ってはしのぶさんのところに行けて寄り道ができることが幸運だった。
誕生日の言い訳の件をどうしようか考える時間ができたから。
「…神楽さん!」
胡蝶邸まで次の角を曲がったらあと少し…と言うところで突然前から来た人に声をかけられた。
その人の顔を見るが、暫く呆けてしまった。
見た事あるのだがどこで会ったのか…。目の前の人は自分の名前も知っているのだから何て失礼な事だ。
しかし、足を怪我しているのか松葉杖をしている彼にハッとした。
(…あ、ひょっとして鬼狩りに一緒に行って怪我された人…?!夜だったからちゃんと顔見ていなかった…!)
漸く点と点が線で結ばれたようなすっきり感を感じて急いで笑顔を作る。
「あ、えと、こんにちは!お久しぶりです!足は大丈夫ですか?」
「う、うん!その節は本当にありがとう!ちゃんと御礼が言いたかったんだけど…会えて良かった!蟲柱様が今日来るって言ってたから待っていたんだ…。」
「え、え?!私をですか?」
無意識に気配を確認する。
もちろん音柱様でいらっしゃる宇髄さんの。こんなところを見られたら一体私は今日何倍返しをされることやら…。
ビクビクしながらも彼に向き合っていると懐から何かを取り出して私に差し出した。
手の中に入っているのは桜の刺繍があしらわれた可愛らしい手拭い。
(…何故手拭い??)
彼がそれを私に差し出した理由もわからないが、まさかこれは俗に言う"贈り物"なのではないか?!と顔を引き攣らせてしまった。
「これを渡したかったんだ。あの時、手拭いを俺の血で駄目にしてしまったから…。気に入ってくれると良いけど、女性物なんて選んだの初めてで…。」
そう言われてまたもや遅れてその時の記憶が甦ってきた。
しかも薄っすらと頬を染めて照れてる目の前の青年を見て、流石の私も背筋が凍ってしまう。
もちろん宇髄さんのことが頭をよぎったせいで。