第15章 君が生まれた日※
「そういえば先日桃の節句だったけど、ひょっとしてほの花は誕生日だったんじゃないかな?」
「…え?……あ…!!」
そう言われて完全に自分の誕生日を失念していたことに気づく。
まぁ、寝込んでいたし、覚えていたとしてもどうすることもできなかった。
「ははっ、忘れていたのかい?毎年灯里さん達がこの時期になると桃の節句の日が娘の誕生日だとよく言っていたからね。天元にお祝いしてもらわなかったの?」
「……や、え、えっと…。」
やばいやばいやばいやばい…。
私、誕生日のこと自分でも忘れてたけど、誕生日が桃の節句である三月三日だと言ったことない。
要するに彼は知らない。
事あるごとに贈り物をしてこようとする彼が私の誕生日を知らずに過ぎてしまったことを知ったら…
(…絶対怒り狂う…。そして私のお股は瀕死になる…。)
「…う、宇髄さんに誕生日が桃の節句の日だと言うのを忘れていました…。」
「…………それは…、早く言った方がいいね。きっと…、知りたいと思うよ。天元なら。」
いつも笑顔の産屋敷様ですら少しだけ顔が引き攣ってみえたのは私の気のせいだろうか。
最後に一秒だけ手を翳すとお辞儀をして部屋を出た。
部屋を出た後、すぐに少しの目眩が出るが、ほんの一瞬で治まった。
(…一秒なら一瞬の目眩…。)
しのぶさんとの約束できちんと秒数を数えてどんな症状が起きるか把握するために今日はお試しで使ってみた。
全快しているから大した症状はないが、先日のように負債が溜まっていたり、立て続けに使うことは危険だろう。
それよりも誕生日だ。
いつの間にか20歳になっていたと言うのに忘れていたなんて馬鹿にもほどがある。
「…あー、怒るかなぁ…。宇髄さん…。」
思わず声に出てしまった彼への思案の言葉。
普通に考えたら彼の性格上、怒る。
そして死ぬほど床で激しい愛をぶつけられそうな気しかしない。
更に今日は先ほど我慢してもらってると言うのに…。
(…私、明日、また鍛錬お休みかな…)
彼の絶倫には毎回ついていくのが精一杯。
それでも彼の愛は温かくて大好き。