第15章 君が生まれた日※
──産屋敷邸
あまね様に案内されていつものように耀哉様の部屋に入るとすぐにふわりと笑った彼が口を開く。
「ほの花、初任務お疲れ様。体調はもういいのかい?」
そんなことを聞かれたものだから驚いた。
産屋敷様はそんなことまで把握していらっしゃるとは思わなかった。
初任務だけでなく、体調を崩していたことも知っていらっしゃったとは…。
「は、はい!ご心配をおかけして申し訳ありません。この通り全快致しました。」
「天元が心配してたでしょ?大変だったと思うけどお疲れ様。すごく活躍したと聞いてるよ。流石は天元の継子で陰陽師の末裔だね。」
「恐縮です…!宇髄さんには確かに心配かけてしまって申し訳なかったです…。大したことなかったのに…」
「たとえほの花が平気と思っていても天元からしたら重い軽いは関係ないと思うよ。愛する人が体調悪ければ心配になるでしょ?」
産屋敷様はさも当たり前と言うように笑ってくれるものだからさっきアレほど心配だから…と鬼狩りまで辞めさせようとした彼が愛おしくなった。
(…私って本当に宇髄さんに愛されてるんだなぁ…。)
彼の隣に腰を下ろすといつものように薬の調合を始める。
「お変わりはありませんか?どこか疼痛や不調は?」
「変わりないよ。先日新しく持ってきてくれた薬が効いたのか凄く気分がいいんだ。ありがとう。」
それを聞いて少しホッとした母が里に残していた薬をもう一度分解し直して、今の産屋敷様の体調に合わせて調合したものが効いたのであればやはり母のおかげだ。
薬の微調整を行い、万が一の時の頓服と一緒に薬箱に入れると薬膳茶の茶葉もお渡しする。
「この薬膳茶を食間にお飲みください。気分がすっきりすると思います。」
「よく灯里さんにも薬膳茶をもらったんだ。苦いけど、思い出の味だよ。ありがとう。」
母も同じことを考えていたのだろう。
産屋敷様が長く生きられないことは知り得ていて、少しでも気分が良い時間が多いようにと…薬師ならば誰しも思うことだ。