第15章 君が生まれた日※
部屋に帰ると、手元にあるモスリンを大急ぎで切り取るとチクチク縫いつけていく。
胸元の五芒星の首飾りが少しは隠してくれていたので宇髄さんに言われるまで気付かなかった。
しかし、確かに布面積は少なすぎるので言われた通りに縫い付ける。
宇髄さんは意外に変化に敏感だ。
以前、汚れるのが嫌で、頂いた花飾りを髪につけなかったときも直ぐに気付いていたし、前髪が伸びてきたので切ってもすぐ気付いてくれる。
本当に目敏い。
そんな宇髄さんに一つとは言え、大きな隠し事をしていることはやはり後ろめたいし、緊張する。
今から産屋敷様のところに行くから余計にこんな緊張感に包まれているのだろう。
でも、しのぶさんに伝えたことで少しだけ肩の荷が降りた気もしている。一人で抱えていた時は未知への不安感を常に感じていたが、今は向き合おうと思っている。
この能力は特別なもの。
備わっているのならば上手に付き合っていきたいと思えたのはしのぶさんが協力してくれるおかげでもある。
使ったら駄目という原則はあるにせよ、使ってしまった場合の対処法もまた考える必要がある。それは自分の体の一部のようにその能力がある以上は仕方ないことなのだ。
縫い終わると再びそれを着用して姿見で見え具合を確認して、薬箱に薬を詰める。
里に取りに行ったので十分の量の西洋薬草があることはいいのだが、これは消耗品だし、いずれはなくなる。
持って帰ってきた中に西洋薬草の種もあるので、そろそろ育てようかなと思っていたのだが…植木鉢では足りないし、できれば温室のようなところが欲しい。
しかし、問題はある。
ここは"音柱"宇髄天元の屋敷であり、私は継子。
流石に屋敷の設備に関してとやかく言うことは憚られる。
いくら今は恋仲であるとは言え…
私は後から此処に住まわせてもらった立場であり、そこに関しての優先順位は低いと思う。
いや、低くないといけないと思う。
あくまでも私は居候の恋人に過ぎないのだから。
そこは図々しく"自分の家感"を出しては申し訳ない。
また別の方法を考えようと思い、薬を詰め終えると産屋敷邸へと急いだ。