第15章 君が生まれた日※
「兎に角その乳だけ何とかしてから行けよ。誰にも見せんな。俺のだろ。」
「…はーい。」
「不満げな顔してンなぁ?ほの花ちゃん。俺のだってまだ自覚できてねぇんなら今から部屋に連れ込むぞ。」
「新しいぴろぴろを大急ぎで付けてきます!!」
どういう経緯で胸元のピロピロしていた布が無くなったのかは分からないが、ほの花自身も覚えてないことを鑑みると、鬼狩りの時に取れてしまったのだろう。
熱が下がったから迎えにきてくれと胡蝶に言われて、任務から帰ってきたばかりだったが猛烈な速さで迎えに行った。
疲れている時こそほの花の顔が見たいし、ほの花の温もりが恋しくなる。
アイツに触れるだけで簡単に疲れが溶けていくようにホッと安心できるのは俺が溺れきっている証拠。
本当はもう二度と鬼狩りなんかしなくていいだろ、とここ数日ずっと思っていた。
俺がずっとこの手で守ってやればいい。
ほの花が鬼殺隊として、継子として戦果を上げることはもちろん師匠としては嬉しいし、鼻が高いがそれを上回るほどほの花を戦いに出したくない。
頭を覆い尽くすほどの不安感はこれ以上御免だと思った俺はお館様の薬師だけをやっていればいいのではないか?と思った次第だ。
だからあらゆる理由を言い訳としてほの花に鍛錬をしなかったわけだが、じゃじゃ馬ほの花には通用しない。
実戦でやったことを復習したいのだろう。
それは勿論鬼殺隊士としては素晴らしい向上心だが、手元に置いておきたい自分からしたら要らぬ向上心だ。
慌ててピロピロを付けに行ったほの花を見送ると縁側に座って空を見上げた。
確かにほの花の技は実戦で使ったことで習熟度が上がっていたし、これならば戦果を上げたのも納得できる。
「…これ以上強くなっちまったら任務も増えんだろーが…。」
不満は不安だ。
手元に置いておけば自分が守れるのに…というのは自分本意の考えなのは分かっているが、任務が死と隣り合わせだと知っている分、愛おしい女には安全なところで待っていて欲しいと思ってしまうのだ。
「…あー、アイツ…妊娠させてやろうかな…」
そんな男としても人としても終わってる考えが出てきてしまったところで俺は汗を流すために湯浴みに向かった。