第2章 興味本位
宇髄さんは本当に不思議な人。
今日会ったばかりだというのに、簡単に信頼できてしまうのは全てを包みこんでくれるような包容力があるからだと思う。
同じ能力を持っているわけではないと言う事実は明らかになったのに、彼に話そうと思えたのはそんな彼の懐の深そうな雰囲気のせいだ。
直感で"彼に話しても大丈夫"だと感じたのだ。
案の定、この能力を目の当たりにしても気持ち悪がるわけでもなく、受け入れてくれたのは本当にホッとした。まぁ、懐から小刀を出して切りつけたことに関しては驚かれてしまったが。
しかし、ホッとしたのも束の間、私はこの能力のことを最後まで話していなかったことを突然襲って来た疲労感で思い出させられた。
ずん──と怠くなる体はただでさえ体調不良だった身には堪えるというもので、屈んでいても大きな縦寸の彼を見上げていた視線はどんどん下がっていき、怠さから瓦に手を付いた。
「?ほの花?どうした、大丈夫か?」
突然俯いた私の肩を掴み、支えてくれている宇髄さん。その手の温かさにやっぱり彼の手には不思議な能力があるのではないかと考えてしまう。
「…ごめんなさい、副作用、というか。能力を使うと治した分が疲労として跳ね返ってくるんです。」
「は?!おまえ、馬鹿か!だったら簡単にそんなもん使うな!俺の体に掴まれ。」
あまりの剣幕にビクッと肩を竦ませたが、支えてくれる手があまりに優しくて"ああ、心配してくれてるんだ"と分かり、不謹慎ながら少し嬉しかった。
「大丈夫です!大きな怪我を治したわけではないし、すぐ治ります。今日はちょっと体調不良だったから…!驚かせてごめんなさい。」
既に先程の疲労感は消えていたし、あれくらいの使用時間であれば本当に一瞬の疲労感で済むのだが、やはり体調不良が尾を引いていたようで心配をかけてしまったのは申し訳なかった。