第2章 興味本位
やっとほの花が俺の体を心配して来た理由が分かったが、生憎俺にはそんな能力はない。
知らなかったとは言え、迂闊に"能力の想像ができない"だなんて言ったが為にほの花に無理をさせてしまったのかと思うと申し訳なさが募る。
月明かりに照らされて、青白い顔をしているほの花を見て、こんなところに長居をさせると今度は風邪をひかせてしまうと感じ、支えていた彼女の体を引き寄せると抱き上げた。
「掴まってろ。」
反論の余地も与えないまま、屋根から飛び降りるとふわりと舞う彼女の髪からまた花の香りがした。
腕の中にいるほの花をちらりと見ると、風呂上がりでお互い夜着な上、着物の合わせ目から豊かな胸の膨らみが目に入ってしまい、変な気分にさせた。
それを振り払うように、彼女に割り当てた部屋に向かうと襖を開けて、敷いてあった布団の上に横たわらせた。
「今日はもう休め。いいな?」
「は、はい!明日は何時に始めますか?」
「…?何の話だよ。」
「え?き、鍛えて下さるのでは…?継子になったんですよね?」
コイツ、真面目か。いくらなんでも体調不良で碌に飯も食えねぇ女にすぐ明日から修行なんてするわけがないだろうが。
「あのな…ンなもんは体調が戻ってからだ。」
「え?!で、では…明日は何をすればいいですか?」
「寝てろ。以上。」
「え、えええ?!そ、そんな寝込むほどでは…」
「うるせぇ。じゃあな。おやすみ。」
ほの花がまだ何か言いたそうだったが、襖を閉めることで強制的に会話を終了させた。
これ以上一緒にいたら変な気分になってしまいそうだったのだ。
「あっ…ぶねー。」
足早に自分の部屋に戻るとボフンと布団の上に倒れ込み顔を埋めた。もう少しあのまま一緒にいたら継子にしたばかりで危うく手篭めにしてしまうところだった。
頭に浮かんできたのは雛鶴の言っていた言葉。
『とりあえず継子にしておいて、手懐けたら手を出すつもりじゃないですよね?!』
(…マジ気をつけねぇとやべぇな。)
人知れず、ハァっと吐いたため息は暗闇の中に吸い込まれていった。