第2章 興味本位
「あー…要するにお前は手を翳すだけで怪我や体の不調を治す能力があるっつーことでいいか?」
「そういうことに…なります…。」
なるほどね、だから俺が背中を摩って、気分が良くなったからそう思ったっつーことか。小難しい顔をして下を向くほの花の眉間を思いっきり指で突っついてやると痛みで涙目でこちらを向く。
「そんな顔すんなって。誰にも言わねぇし、すげえ能力じゃねぇか。だが、実際見たわけでもねぇからちょっと想像ができねぇけど…。」
「そうですよね…、あ…!そうだ!」
何を思いついたかと思うと突然、懐に忍ばせていた刃物で俺の手を切り付けたほの花。やる瞬間に「ごめんなさい」という断りを入れたが、あまりに唐突なことで自分の手からスーッと血が垂れるのを見るまで何をされたか分からなかった。
敵だったら危なかったが、コイツに気を許していた証拠だと思ったら咎めることも憚られる。
「すぐ治しますので…!」
慌ててそう言うと、すぐに切り傷に手を翳したほの花。すると翳したところがじんわりと温かく、まるでそこだけ湯に浸かっているような感覚がした。そして、大した痛みでもなかったが、その痛みすらだんだん感じなくなっていき、ほの花が手を離したときにはそこにあったはずの切り傷はすっかり無くなっていた。
「……よぉく分かった。だが、急に刃物出してくるなよ。」
「す、すみません!長旅だったので護身用にいつも身に付けていて…!」
俺に実際に見てもらいたかったのは分かったが、ほの花じゃなかったらぶん殴るところだ。慌てたようにその小刀を懐に仕舞うと気まずそうにこちらを窺うように見つめてきた。
確かにこんな能力は迂闊に他人にベラベラ話すようなことではない。話せと促したのは自分だが今日出会ったばかりの俺によく話してくれたと思うほどの内容だった。