第14章 【VD特別SS】初めての愛をあなたに…※
渡された箱をゆっくりと開けるとそこにはこげ茶色の…洋菓子?
しかし、開けた瞬間、家の中の匂いと全く同じだと気付いたのでそれが家の中で作られたものだと分かる。
「…まさか、作ってくれたのか?」
コクンと頷くほの花の表情はまだ冴えないままなので、どうしたもんかと頭を撫でてやる。
自分に手作りの菓子をくれるということがどれほど嬉しいか。
それなのにくれたのにしょんぼりしているほの花の表情の意味がわからなくて再び首を傾げると、涙目のまま言葉を紡ぎ出した。
「…本当は十四日に渡したかったんです。十四日に渡すことに意味があったんです…。」
「…は?十四日?」
時計を見ると確かに零時を越していて今は十五日になる。
しかし、昨日は誕生日でもないし、俺からしたら昨日でも今日でも関係ないほど嬉しいのだが…。
「十四日って…?何の日だよ。」
「…"ばれんたいん"。」
「ばれんたいん?何だそりゃ。」
「女性から想い人にお菓子を贈る我が家の習慣で…、元々は異国の行事でそこでは男女逆なんですけど…。家では母が昔から女性から男性に想いを伝えてお菓子を渡す日って決めてたんです…。
私、今年初めて好きな人にお菓子渡せる…と思ってずっと楽しみにしてたのに…渡せなくて…。悲しくなっちゃって…。」
俺は今、変な顔をしているかもしれない。
仕方ないだろ?
何だよ、この目の前の可愛い生き物は。
そんなクソ可愛い理由で泣くとか死ぬほど愛おしいだろうが。
「…絶対、今くだらないって思ってますよね?」
「…思ってねぇって。可愛すぎて放心状態だわ。なめんなよ。」
「……変なことで泣いてごめんなさい。でも、初めてだったから浮かれててどうしても昨日の内に渡したかったんです。宇髄さん、遅くなっちゃったけどこれ良かったら食べてくださいね。」
「可愛すぎて死にそうだから食べたらほの花も食べていい?」
真っ赤な顔をしてコクンと頷くクソ可愛い恋人をもう一度抱きしめて額に口づけを落とすと、まずはその菓子に向き合った。