第14章 【VD特別SS】初めての愛をあなたに…※
「お、うめぇじゃん、これ。」
そう言って食べてくれているがこんな真夜中に食べさせるようなものでないことに後から気づく。
「あ、あの…やっぱりもういいです。朝食べてください。」
「何で?お前が俺のために作ったんだろ?今食わせろって。」
「それは…そうです、けど…。」
甘さ控えめに作ってはいるが寝る前に恋人に洋菓子食べさせる女って最早鬼だ。
文句も言わずに食べてくれている宇髄さんの優しさが染みるが、やはり若干申し訳ない。
「何だよ、お前も食いてぇの?腹減った?」
「…そうじゃないです、けど…むぐっ!!」
言い終わらないうちから口に"がとーしょこら"が放り込まれるので息が止まりそうだった。
それをモグモグと食べていると彼が満足そうに微笑むので私の目尻も下がった。
「な?うめぇだろ?」
「…美味しい、です、けど…。」
「ところでこれって何つーの?初めて食った。」
「あ、えと…"がとーしょこら"です。母が毎年父に渡してた思い出のお菓子で…私も恋人ができたらこれを渡したいって思っていたんです。」
日時は違えど、思い出の味を大好きな宇髄さんに渡せたことはやはり嬉しい。
日にちなどもういいではないか。
好きな人が目の前にいて、作ったお菓子を食べてくれる幸せはそんなことでは崩れない。
「宇髄さんに、食べてもらえてよかった…。えへへ…。」
急に小っ恥ずかしくなった私は顔が熱い。
きっと真っ赤に染まっていること間違いなし。
いつ照れているのだ。照れるのであればもっと前だろう。
散々、泣きじゃくって食べてもらえたら恥ずかしくなるなんてお子ちゃまもいいところだ。
すると、宇髄さんが私の手を引いたので、そのままなだれ込むように彼の胸の中に収まる。
大好きな温もりに包まれたかと思うと、そのまま横抱きにされて熱い唇が降ってきた。
性急に舌が差し込まれると"がとーしょこら"の味が絡み合ってまだそれを食べてるみたいに感じた。
首に抱きついてみると宇髄さんの髪が顔にかかって擽ったい。
寒い部屋の中、熱い吐息が溶けていく。