第14章 【VD特別SS】初めての愛をあなたに…※
ほの花を腕に収めると家の中とは違う甘い香りが鼻腔いっぱいに広がる。
その感覚がたまらない。
華奢なのに柔らかな肌の感覚が腕に感じると疲れが溶けていく。
…のに、何故か号泣しているほの花に首を傾げる。
泣くほど嬉しかったのだろうか?それはそれで嬉しいが長期任務と言っても三日だ。
もっと長い時もあるし、短い方だと思うのだが…。
「ひっく…」と嗚咽しながら腕の中で泣き噦るほの花の頭を撫でると理由を聞いてみることにした。
「…どうしたよ?泣くほど嬉しかったっつーなら嬉しいけど、何かあったんだろ?言ってみ?」
「…ううーっ…絶対、呆れます…。」
「そんなもん言ってみねぇとわかんねぇだろ。」
「私なら絶対呆れるもん!…ます!だから言いたくない…けど、言う…言います…。」
「言うんかよ。ツッコミどころ満載すぎだろ!」
コイツそろそろ敬語やめてくれねぇかな。
継子っつーのが先だったからこうなるのは分かるが、自分達は恋仲であり、気を遣う必要性はないはず。
ほの花も感情が昂ると不意に素が出るところが可愛いし、そのままでいいというのに。
だが、そんなことを今言っても話がブレそうだ。今はほの花の話を聞く方が優先だろう。
「…で?どうしたよ?」
「こっち…来てください。」
「ん?」
ほの花が腕の中から抜け出したことで急に温もりがなくなって少し物足りないが、そのかわりに俺の手を自ら繋いできたので握り返し、ついて行く。
連れてこられたのはほの花の部屋で主人がいなかったことでツンと寒さを感じる。
ほの花は徐に棚まで行くとその上に置いてあった箱を取って持ってきた。
「…これを、宇髄さんに渡したかったんです。」
「……?ん?おお、ありがとう…?」
渡したかったものがあったから泣いたのか?
いや、いま渡せたよな?
泣くほどのことだろうか?
ほの花の目は赤いままでその箱を見つめている。
真偽のほどもわからないのでその箱を開けてみることにした。