第14章 【VD特別SS】初めての愛をあなたに…※
長期任務で家を空けること三日。
やっと…、やっとほの花を抱けるぞ…!と俺の中のやる気は完全にほの花頼みなところがあるこの頃。
陽が沈み、真っ暗になった頃に漸く屋敷に着く。
意気揚々と玄関をガラッと開けると、嗅いだことのない甘い匂いに目を見開く。
(…何だ?この匂い。)
特に嫌な匂いではないが、嗅ぎ慣れない甘ったるい匂いはほの花を彷彿とさせる。
(…アイツも甘い匂いすんだよなぁ〜。)
ニヤける顔を止めることもできずに俺だが、いつもはここまで出迎えてくれるほの花の姿はいつになっても現れず、代わりに三人の元嫁達がトコトコと来た。
「あーあ…天元様帰ってきちゃったんですねぇ。」
「はぁ?何だと、おい!帰ってきちゃ駄目かよ。俺の家だぞ!」
「違いますよー。入れ違いです。さっきまでほの花さんいらっしゃったんですが、怪我人が多いそうで胡蝶様のところに行かれました。手当の応援らしいです。」
"残念でしたねぇ"と言う三人が妙にニヤニヤしてるのが気に食わない。
ため息を吐くと仕方ない…と先に湯浴みを済ませることにした。
それにしても家中に甘ったるい匂いがするのは一体何なのだ。
「…なぁ、この匂いなんだよ。」
「秘密です。」
「何で。」
「ほの花さんに教えてもらってください。私たちからは言えません。じゃあ、お風呂どうぞ。御夕飯も出来ていますので出たら食べましょうね。」
雛鶴にそう聞いても取り付く島もなく、そう言われてしまう。どうせこれ以上聞いても教えてはくれないだろうし、体に害はなさそうなので、言う通りにほの花を待つことにした。
しかし、すぐに帰ってくるかと思いきや、一時間、二時間、三時間…。
もう零時を越えてしまう。
流石に心配になってきた。怪我人の手当てと言うことであれば虹丸を遣いに出しても忙しくてそれどころじゃないかもしれない。
そうだとしてもこちらはほの花の顔を一目でも見てから休みたい欲が最高潮のためこのまま寝ることなどできやしない。
(あわよくば一発…)