第14章 【VD特別SS】初めての愛をあなたに…※
「…奥様達と結婚したのは私が12の時だったと思います。私とも仲良くしてくれて本当の姉のようでした。御子はいません。御三方とは違い、戦える強い女性という感じではなく、夫のいない家を守る古き良き女房でした。なので…比べる必要はないと思います。そもそも土俵が違うというか…。雛鶴さんとまきをさんと須磨さんは"くの一"として素晴らしい能力もお持ちですが、家事能力もすごいじゃないですか!みんな違ってみんな良いのです。正宗達には幸せになって欲しいので…どうか、宜しくお願いします。」
私の言葉を一つも逃すものかと食い入るように聞いていた三人は納得するかのように頷いた。
確かに夫婦仲は良かったと思う。
そこは間違いなかったと思うが、"今"を生きている彼らのそばにいるのは目の前にいる三人。
もし、そんな彼らと添い遂げたいと思ってくれるのであればそれほど嬉しいことはない。
それと同時に彼女達が気にする必要はこれっぽっちもない。
ここからは当人同士の問題であり、過去の奥様達のことは気にしないでいいと思う。
その言葉はまるで自分自身にも言える言葉。
(…私も、そろそろ彼女達のことを気にするのはやめよう。愛してくれている宇髄さんにも三人のことを気にかけてくれてる彼女達にも失礼だ。)
「…さぁ、早くしないと御夕飯を作れなくなってしまいます!湯煎をするので御湯を沸かしてもらいたいのですが…。」
「あ、私、沸かします〜!」
甘い香りがする台所で湿っぽい話をしてしまったが、彼女達のことを聞けて良かった。おかげで私も本当の意味で宇髄さんのことを全力で愛せる気がした。
「…ほの花さん、ありがとうございます。私、正宗様が好きなんです。だから…、また話を聞いてくださいね。」
コッソリと耳打ちしてくれた雛鶴さんは女の私でも可愛いと悶えるくらいのとびっきりの笑顔。
彼女は強い。
ううん。まきをさんも須磨さんも。
ちゃんと受け止めて乗り越えて、それでも自分の想いに向き合っている。
そんな彼女達を私は心から応援したいと思った。