第14章 【VD特別SS】初めての愛をあなたに…※
「では!"がとーしょこら"を作りましょう!生菓子なので明日までには食べるように伝えてくださいね!」
「「「はぁーい」」」
"がとーしょこら"はそこまで難しくない。
お菓子屋さんから仕入れたお菓子作りの道具やらお菓子作りに必要なものを取り出して卓に置くと須磨さんが「これって何ですか?」と秤を刺して聞いてきた。
「あ、えと…秤なんです、けど…。」
「秤??変わった形ですねぇ…。材料を計るものですよね?」
「そうなんですけど、それ…調剤用なんです。」
「…ええっ?!」
須磨さんが不思議に思うのも無理はない。
普通の秤はこんなものではない。
母がいつもこれでやっていたので慣れてしまい、使っているだけで普通は使わない。
「…すみません…!変な物使って…!ただ普通のお菓子作りよりもかなり緻密な分量で作れますよ!えへへ…。」
「「「……(変わってる…)」」」
それぞれの"がとーしょこら"を作るために"ぼうる"に材料を入れて掻き混ぜていると雛鶴さんがぽつりと話し出した。
「…本当は、本人に聞きにくいこともあって…、聞いてもいいですか?」
その顔は少しだけ不安そうな表情。
何を聞こうとしているかは分からないがちゃんと答えなければ…と思わせられる。
「何でしょう?」
「…正宗様達の奥様はどんな方でしたか?」
それを聞いてハッとした。
まきをさんも須磨さんも食い入るように私を見ていて、彼女達のが見ている本当の場所がわかった。
そりゃあそうだよね…。
気になるよね。元奥様達のこと。
私があなた達のことを気になってしまっていたように。更には彼女達はすでに亡くなっている。
思い出は美化されて、綺麗なものとして残ることが多いため、どうしても彼らの中でも綺麗なまま残っているだろう。
それはこの人たちからしたら絶対に通らなければならない道で、知りたくないけど知らずには通れないところ。
私は極力、言葉を選び慎重に話すことにした。
しかし、それはあくまで私視点のこと。
彼らのことは彼らしか分からない。
夫婦関係のことをとやかく聞いたことはないため、実際のところもわからないからだ。